④膨らむ負債。現在までに35兆ドル(約5342兆円)に達し、これはGDPの123%相当だ。トランプ次期政権が減税を実行すれば、数字は上昇する。さらに大きく増えるようだと軍事予算の拡充などが不可能に。

⑤貿易戦争。選挙戦中、トランプ氏は中国からの輸入品への関税を60%に上げ、他国にも追加の関税をかけると述べた。そうなれば、インフレ率が上がり、他国からの反撃も発生し、サプライチェーンが大打撃を受ける。アーバン氏は、トランプ氏による「MAGA(アメリカを再び偉大な国にする)」の実現化ははかなり難しいだろうと予測している。

核兵器禁止条約を考える

昨年10月、ノーベル平和賞は被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」が受賞したことが発表された。被団協は核兵器廃絶と原爆被害への国家補償を柱として活動しており、ウクライナ戦争でロシアが核兵器の脅威をちらつかせる中、タイムリーな受賞となった。

国連が「核兵器禁止条約」を採択したのは2017年である。「核兵器の非人道性」を根拠に、核兵器の開発、製造、保有、使用を禁じる初めての国際条約で、2021年に発効した。62か国が参加するが、米国、ロシア、中国などの核保有国及び日本は不参加である。被団協は条約成立の推進力となった。6月には、条約発効に尽力したオーストリアの外交官が書いた本の邦訳版「核兵器禁止条約『人道イニシアティブ』という歩み」(白水社)が出版されている。ご関心のある方には閲読をお勧めしたい。

以前、筆者はBBCが1945年8月の広島と長崎で被爆者となった人々の証言を集めた番組「アトミックピープル」を放送したことを紹介した。この中に出演した被爆者の一人が、中村キヨミさん(100歳)だ。長崎では毎月9日、原爆がさく裂した午前11時2分に平和公園内にある「長崎の鐘」を鳴らすイベントが行われている。

10月2日、筆者は長崎を訪れ、中村さんと一緒に鐘を鳴らした。中村さんは被団協とは別組織になる長崎県被爆者手帳友の会のメンバーである。