ハンガリーはウクライナのNATO加盟に反対しており、オルバン首相は7月にはプーチン大統領と会合の機会を持った。NATO内の不協和音が聞こえてくる。
英国を筆頭に欧州主要国の指導者はトランプ政権発足後もウクライナへの支援を続けると約束しているが、焦点はウクライナへの武器供与額が最大の米国がどう出るかだ。独シンクタンクの調べでは、ロシアの侵攻開始(2022年2月)から2024年6月までの間、米国によるウクライナへの武器ほか機材の供与総額は555億ドル(約8.47兆円)に上っている。
ウクライナは対ロシア戦争で「勝利計画」を発表し、これをてこに念願のNATO加盟を目指す。10月、ルッテ事務総長は「現状では全面的に支持できない」としたもの、加盟までの過程プロセスは「不可逆的」とする立場を改めて表明した。
ウクライナ戦争解決案の1つとして、トランプ氏はウクライナが少なくとも20年間は加盟しないと約束する代わりに米国が継続して兵器を供給する道を考慮に入れているという(米ウォールストリート・ジャーナル紙、11月6日)。ウクライナには到底受け入れられない提案に思えるが、どうなるか。
トランプ氏の外交政策を阻む要因とは英国の外交ジャーナリスト、マーク・アーバン氏がトランプ次期大統領の外交政策にとって障壁となる5つの項目を挙げている(英タイムズ紙、2024年11月9日)。
①予期せぬ国際的な事態の発生。2023年10月7日、イスラム抵抗運動組織ハマスによるイスラエルへの攻撃は複数の国に拡大した。紛争がさらに激化する可能性がある。
②プーチン大統領が対ウクライナの軍事上の優位性を誇張し、これを信じたトランプ氏がプーチン氏に妥協することで停戦実現を急ぐ可能性。「プーチンに負けた弱い大統領」と見なされるだろうとアーバン氏は指摘する。
③米国の軍事力の弱体化。中国と一線を交えることになった場合に十分な対応ができない程度にまで余裕がなくなっているという。