昨年11月の米大統領戦でトランプ前大統領が勝利し、欧州各国は1月に発足する新政権への対応を迫られている。2017年から4年続いた第1期目で、トランプ氏は自国の利益を優先する「米国第一」主義を掲げ、欧米諸国で構成される北大西洋条約機構(NATO)の加盟国に対して防衛費支出の倍増を要求して欧州政界を慌てさせた。

トランプ氏公式HPより

トランプ氏の再選が確定した後の11月7日、欧州連合(EU)加盟国と英国など近隣諸国40か国以上で構成される「欧州政治共同体」首脳会議がハンガリー・ブタペストで開催された。マクロン仏大統領は、「我々は欧州の利益を守るために準備をしなければならない」と結束を呼びかけた。

一方、10月にNATO事務総長に就任したマルク・ルッテ氏はトランプ氏が1期目で「強力な米国の指導力を示した」とNATO加盟国に対する軍事費用負担増額の要求を好意的に表現した。来年の再就任時には「前よりも強くなり、前より団結している同盟が新大統領を歓迎することになる」。

危機感を持って欧州の利益を守ろうとするのか、それとも協調路線に比重を置くのか。どちらの路線も維持しながら進むしかないのだろう。現状を俯瞰してみたい。

ウクライナ戦争はどうなる?

欧州にとって最大の懸念事項となるのが、2022年2月に始まったウクライナ戦争の行方である。大統領選挙中にトランプ氏は「24時間以内に」戦争を終わらせると発言しているが、そのために何をするのかは不明だ。ウクライナへの武器供与の停止やプーチン露大統領と取引をして、停戦に持ち込むなどの選択肢が噂されている。

先の欧州政治共同体の会議の場で、ハンガリーのオルバン首相はウクライナ支援の再考や早期停戦を提案した。「欧州に住む人はなぜこの戦争の財政支援をするのか、その目的は何かを理解できていない。どの制裁が効果的なのかもわからない」。

会議に参加していたウクライナのゼレンスキー大統領は、即時停戦は「危険すぎる」と反論した。停戦を急ぐと、ロシアがこれを悪用し、占領が永遠に続くと警告した。「即時停戦は戦争の現実を知らない空想家による発言だ」。