ではなぜ反原発・脱被曝、安倍氏への問責決議、入管法改正案、能登半島の復旧問題などで破天荒な言動をとったのか。

反原発・脱被曝運動で人々の感情に怒りを着火して支持層を形作ったことは、山本にとって何ものにも変え難い成功体験だった。だが震災と原発事故ほど人々を不安に陥れる出来事はそうそうない。そこで本来は何も問題ない出来事で、しかも出来事の当事者ではない人々を焚き付けて権力への苛立ちを高めた上で、一瞬の解放感を与えなくてはならなくなった。このため、山本は破天荒を演じたのである。

だから破天荒を演じなくても支持層にジャストミートする経済政策だけが、突出してまともに見えるのだ。

破天荒の限界

先の衆院選で減税など経済政策を公約に掲げて政局のキャスティングボートを握るまでになったのは、れいわ新選組ではなく国民民主党だった。

日本経済新聞社とテレビ東京が12月20〜22日に行った世論調査では、国民民主党の支持率は自民党に次いで2位の14%だった。3位以下は「立憲民主党」が8.7%、「日本維新の会」が5%、「公明党」が3%、「共産党」が3%、「れいわ新選組」が3%、「参政党」が1%、「日本保守党」が1%、「社民党」が1%、「特に支持している政党はない」が24%だった。

なお、この日経とテレ東の調査では自民党は前回比2%増、国民民主は3%増、立憲民主党は7%減のほか公明、共産も支持を減らし、れいわ新選組は1%減、支持政党なしは5%増となった。国民民主党は主要政党から経済政策で満遍なく支持者を奪ったといえる。

山本太郎とれいわ新選組の経済観だけはまともという評価は、国民民主党の躍進を前に意味のないものになった。これが破天荒を売りにして、何ひとつ実現してこなかった山本の限界だ。

減税やロスジェネ対策がジャストミートする層の中でも、かなり限られた人々が山本を支持するだけで、これ以上は支持層を拡大できそうにない。政権や経済政策に不満を抱えていた人々の多くが、民主主義の面倒な手続きの山を一つずつ解決しようとする国民民主党の態度を支持したのだ。