真冬でも肌の露出が多いファッションを楽しむ女性は多く存在します。
海外でも、やはり寒い冬に肌を露出した服を着る女性に対して、「寒くないのか」と考えるのは一般的な現象のようです。
そこで研究主任のロクサーヌ・フェリグ(Roxanne Felig)氏は、この疑問の背景にある、彼女たちが冬の寒さを我慢できる心理学的なメカニズムを明らかにしようと調査を行いました。
研究者たちが着目していたのは、自己対象化と寒さの感じ方の関連性です。
自己対象化(self-objectification)とは、他人が自分の外見をどのように知覚・評価するかについて強く意識を向けることです。
例えば、子どもの頃は自分が他人にどう見られているかはさほど気にしておらず、自身の立ち振舞や、身だしなみには無頓着です。
しかし青年期になると、鏡に映る自分や、カメラを向けられたときに、自分の魅力に対する他人からの評価に意識が向くようになります。
ただ自己対象化は「単純に人からよく見られたい」というだけの感覚とは少し異なり、自分自身も恋愛対象にするような感覚も含んでいます。
水辺に映った自分の顔に恋をしたナルキッソスという神話がありますが、これは心理学的には自己対象化を表す例の一種です。
つまり自己対象化には、他人からの視線を気にする「見栄」と自分自身をみつめる「自己愛」が含まれているのです。
この自己対象化傾向は、特に女性に強く見られることがわかっています。
もちろん男性にもありますが、一般的には女性ほど強くはありません。
そして、この自己対象化傾向が高まったとき、空腹感などを感じにくくなるなど、身体感覚への注意が低下するということが指摘されています。
自身の外見に対する意識の増加が、注意力のリソースを消費してしまい、身体の認識に向ける注意力を減らしてしまうのです。