さらに、共和党にとってラッキーだったことはNY州の選挙区割りがほぼ変わらなかったことだ。NY州では独立委員会が2020年国勢調査後に選挙区割りを作成したが両党で長いこと合意できず法廷闘争が続いた。民主党はNY州で本来22議席の青い選挙区を獲得することを期待していたが、結局のところ2022年中間選挙では16議席しか獲得できなかった。2024年も同様になり、NY州17区と4区は全米で最も激戦区となる選挙区となった注6)。
トランプ氏と距離を置く激戦区の共和党下院議員Inside Electionsの分析では、 選挙区割りによってほぼ勝利が確定している” Solid Republican ”で187議席を獲得しており、Likely, Lean, or Tilt Republicanまでいれると216議席の確保が可能だ。以下に示す10の超激戦区のうち2議席さえ確保すれば過半数の218議席になるというわけだ。超激戦区で4議席が現職の再選なので、議席さえ死守できれば、共和党は下院で多数党になることが可能となる。
一方で、民主党は選挙区割りによって勝利が確定している” Solid Democratic ”で174議席を獲得しており、Likely, Lean, or Tilt を含めても209議席だ。218議席になるためには、 Likely, Lean, or Tiltを確実に勝利したうえで、激戦区 (Toss-up) で9議席も確保しないといけないので厳しい道のりだ注7)。
激選区 Party 現職の下院議員 トランプ氏から支持 CA州13区 共和党 John Duarte × CA州27区 共和党 Mike Garcia × CO州8区 民主党 Yadira Caraveo - MI州7区 民主党 Elissa Slotkin ※上院選出馬のため引退 - NC州1区 民主党 Don Davis - NM州2 区 民主党 Gabriel Vasquez - NY州4 区 共和党 Anthony D’Esposito × NY州17 区 共和党 Michael Lawler × OR州5 区 民主党 Lori Chavez-DeRemer - WA州3 区 民主党 Marie Perez -ちなみに、Cool Politifcal Reportでは激戦区(Toss-up)は22選挙区なので、追加で12選挙区が増える注8)。共和党のみピックアップしてみる。
選挙区 現職の下院議員 トランプ氏から支持 AZ州 1区 David Schweikert × AZ 州6区 Juan Ciscomani × CA州22区 David Valadao × CA州41区 Ken Calvert × NJ州7 区 Tom Kean × NY州19 区 Marc Molinaro ×しかしながら、共和党も民主党より有利な状況だといっても、共和党に有利であろう議席数は2議席だ。
また、現時点で激戦区の現職共和党下院議員、あるいは現職民主党下院議員への対抗馬として出馬している立候補者はいずれもトランプ氏から支持を表明されていない。これから支持される可能性もあるが、大統領候補と距離をおいて戦うつもりなら、厳しい戦いを強いられる可能性もある。
上院選は共和党がわずかにリード2024年上院選では共和党は51議席確保の見込みだ。上院議員の任期は6年で、だいたい議員100名のうち3分の1が再選挙となる。ただ、その年によって3分の1の内訳はかなり偏っているのだ。2024年でいえば、共和党で再選挙となる議員はたった11名なのに対して、民主党は20名で無所属(といっても民主党と連携している)3名が再選挙となる。
接戦だったAZ州はシネマ議員が引退を決めたことで、 民主党候補者(現職下院議員のRuben Gallego氏)と共和党候補者(AZ州知事に立候補したKari Lake氏) の一騎打ちとなったが、RCPによると民主党がリードしている注9)。
また、接戦とされていたOH州ブラウン議員・MT州テスター議員もリードしている。しかしながら、民主党にとって番狂わせだったのはMD州で元州知事のラリー・ホーガン氏の上院選出馬だ。元州知事としての知名度や人気度で、民主党候補者を大幅にリードしている。正直、ホーガン氏の出馬がなかったら50対50の議席になっていただろう。