その結果、多くの哺乳類においては1回で出産する子の数が系統的に保存されており、近縁種の間でもよく似ていることが示されています。

例えば、イヌ科やネコ科のグループは祖先の系統においても変わらず、1回に複数匹を出産する多胎動物であることがわかりました。

ところがヒトを含む霊長類のグループにおいては異なる傾向が見つかっています。

霊長類の現生種を見ると、ヒトや、その他のチンパンジー、ゴリラ、オランウータンなどの類人猿は基本的に1回に1頭の子供を産んでいます。

他方で、キツネザルやロリス、ガラゴ、南アメリカのマーモセットやタマリンといった小型の霊長類には、ほとんど決まって双子を出産する種がいました。

では、最初期の霊長類においては「1回に1頭を出産」と「1回に2頭を出産」のどちらが主流だったのでしょうか?

それを系統樹から分析してみると、約6000万年前にいた霊長類の祖先は1回につき平均1.6〜1.7頭を出産している可能性が高いと判明。

つまり、このことから霊長類の出産は当初「1人っ子」よりも「双子」の方ががスタンダードであったことが示唆されたのです。

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哺乳類の系統樹における産子数の変遷(赤色ほど少なく、緑から青になるほど多い)、中央のPrimatesがヒトを含む哺乳類であり、現在は1回に1人だが、系統樹を遡ると産子数がわずかに多いことがわかる/ Credit: Jack Hansen McBride et al., Humans(2024)

最初の霊長類が誕生したのは、恐竜がいなくなった直後に当たる約6500万年前とされています。

ですから霊長類のグループはその始まりから「双子出産」が基本であり、むしろ1回に1頭しか産まない方が珍しかったと考えられるのです。

では逆に、霊長類の中で「1回の出産につき1頭」の特徴が進化したのはいつ頃のことだったのか?

それを今回の系統樹から推定すると、約5000万年前には一部の霊長類の中で、単胎での出産が主流になっていることが示されました。