自民党岸田政権が2022年12月に防衛力抜本的強化の方針を策定したのは、2022年2月のロシアによる国際法違反のウクライナ侵略が最大の要因であり、米国の指示命令によるものではない。なぜなら、野党の立憲民主党もロシアによるウクライナ侵略を契機とする日本の防衛力強化には基本的に賛成しているからである。仮に、ウクライナ侵略がなければ「安保3文書」の策定も「防衛費43兆円」もなかった公算が大きい。
これに加え、中国習近平政権は「核恫喝」による「戦わずに勝つ」孫子の戦略に基づき、核戦力を中心とする大軍拡を進めており、台湾の「武力統一」を否定せず、尖閣諸島の領有権を主張し領海侵入を繰り返している。また、北朝鮮も核ミサイル開発を加速し、ウクライナ戦争への参戦などロシアとの軍事同盟関係を強化している。日本にとって両国の脅威も増大しているのである。
このような日本を取り巻く安全保障環境の悪化を考えれば、与党として国家と国民の安全に全責任を持つ自民党政権が、防衛力の抜本的強化に取り組むことが不合理とは言えまい。
ウクライナ侵略後の世論調査を見ても、防衛力強化については反対よりも賛成が多い。そうだとすれば、自民党政権による防衛力抜本的強化は、共産党が主張する「戦争の準備」ではなく「戦争をさせないための準備」すなわち抑止力強化のためと正当に評価されるべきである。まさに『備えあれば憂いなし』である。
共産党の「戦争の準備ではなく平和の準備を」で日本を守れるか?安全保障は「外交と軍事」が車の両輪であり、外交だけで平和と安全を守ることは困難である。このことはこれまでの世界の歴史が証明している事実である。外交だけでは平和と安全を確保できないからこそ、世界各国は多大な人的物的負担をしても軍事力を保持しているのである。
にもかかわらず、共産党は車の両輪である軍事力を無視ないし軽視し、あたかも外交だけで平和と安全が確保できるかのごとき幻想を国民に振りまき、全く非現実的な主張をしているのであり、日本を亡ぼす極めて危険な「空想的平和主義」と言わざるを得ない。