日本共産党は、自民党岸田政権が2022年12月に日本の防衛力を抜本的に強化する「安保3文書」を策定し、これに基づく長射程ミサイルなどの「反撃能力(敵基地攻撃能力)」保有や「防衛費GDP比2パーセント=5年43兆円」という新たな防衛政策に着手して以来、たびたび、機関紙『赤旗』で絶対反対を主張し、「戦争の準備ではなく、平和の準備をせよ」との大宣伝活動を行っている。石破新政権に対しても同じである。
その理由は、「自民党政権による米国追従の軍事力強化は中国、北朝鮮、ロシアを刺激して「軍事対軍事」の悪循環に陥り、戦争の危険性を増大させるだけだ。したがって、日本は軍事力の強化ではなく、戦力不保持・戦争放棄の憲法9条に基づき、東南アジア諸国連合を中心とする「平和外交」を強力に推進すべきであり、『戦争の準備ではなく平和の準備をせよ』」(『赤旗』2024年12月16日、12月28日など)というものである。
共産党の「軍事力強化絶対反対」の背景共産党の「軍事力強化絶対反対」の背景には、共産党が党綱領で規定する「自衛隊違憲解消」と「日米安保条約破棄」のイデオロギーがある。
すなわち、自衛隊は戦力不保持の憲法9条に違反し、安保法制に基づく「集団的自衛権」も米国の戦争に加担し巻き込まれるから戦争放棄の憲法9条に違反する。自衛隊を縮小し、日米安保を破棄し、「平和外交」に徹すれば、日本は米国の戦争に巻き込まれず、他国から侵略されることもない、というのである。共産党の主張は破綻した旧日本社会党の「非武装中立論」に近いと言えよう。
このような共産党のイデオロギーの根底には、侵略戦争はすべて資本家が利潤獲得のために行うのであり、労働者階級は資本家による侵略戦争の犠牲者である、とのレーニンの思想がある。
レーニンは「資本家は世界を資本に応じ、力に応じて分割する。金融資本は植民地略奪の熱望を強める」(レーニン著『帝国主義論』レーニン全集22巻大月書店293頁、303頁)と言っている。戦前における共産党の「侵略戦争反対」はこのようなイデオロギーによるのであり、現在の「軍事力強化絶対反対」も基本的には変わらないと言えよう。
自民党政権による防衛力強化