ブラジルのインガ川の中央にそびえる「インガストーン」は、同国でも最も興味深い考古学的発見の一つである。この石は「イタコアチアラ・ド・インガ」とも呼ばれ、これはトゥピ語で「石」を意味する。ブラジル北東部の都市インガからほど近い場所に位置し、約250平方メートルの広さを持つ。その構造は高さ3.8メートル、長さ46メートルにも及ぶ垂直的な形状をしており、表面には数多くの謎めいた彫刻が施されているのだ。
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解読を待つ彫刻の謎
インガストーンには動植物や果物を模したものと思われる図像、未知の図形、さらには天の川やオリオン座の星座が刻まれている。このような彫刻が存在することから、インガストーンは少なくとも6000年前に遡る考古学的遺跡とされている。この石は考古学者や人類学者にとって主要な研究対象となっており、その地質学的構造も注目を集めている。
インガストーンは片麻岩(へんまがん)という岩石で形成されており、これは高い圧力と熱を受けて変成した岩石である。片麻岩には特徴的な層状構造があり、この「片麻状構造」がインガストーンのユニークな見た目を形成している。特に滑らかに研磨された表面と深く刻まれた彫刻が、古代の高度な技術を示しているとされる。
研究者たちは、この彫刻の一部にフェニキア文化との関連性を見出そうとしてきた。フェニキア人がこれを作った可能性を示唆する説もあるが、科学的な証拠が不足しており、まだ仮説の域を出ない。また、一部の研究者はイースター島の住民や未知の技術による作品ではないかと主張している。彫刻に見られる幾何学的なスタイルが、イースター島の石像や他の文化の彫刻と共通点を持つことがその根拠だ。しかし、それ以上の具体的な関連性は確認されていない。