ただ真に驚くべき現象は、醤油をかけた瞬間に起こります。
醤油を上からタラ〜とかけると、死んだはずのイカが勢いよく足をバタつかせ始めるのです。
イカはすでに死んでおり、脳機能も正常に働いていないので、これは醤油にびっくりして、自らの意思で動かしているわけではありません。
この現象は科学的に言うと、醤油の塩分とイカの細胞との神経反応によって起こるのです。
死んだイカが踊り始める科学的メカニズムとは?
死んだ直後のイカに醤油をかけると足が動く現象は、筋肉の反射的な収縮が原因です。
この現象は次のような科学的メカニズムによって発生します。
まず第一に、イカの足は筋肉細胞とそれを動かすための神経で成り立っています。
また死んだ直後だと、筋肉の細胞内にはしばらくの間、身体活動に必要なエネルギーである「ATP(アデノシン三リン酸)」が残っています。
次に、醤油には塩分(ナトリウムイオン)が含まれており、これが筋肉の細胞膜に触れると、膜を挟んだ内側と外側で電位差が生じます。
通常、筋肉細胞が活動していない状態だと、細胞膜の内側は外側に比べてマイナス(負)の電位を持っています。
ところがナトリウムイオンが細胞膜を通過して、内側に流入すると、一時的にプラス(正)の電位に変化するのです。
このようにして電位差が生じると、細胞膜にあるカルシウムチャネルという神経伝達の窓が開き、筋肉細胞内にあったカルシウムイオンが放出されます。
そして放出されたカルシウムイオンは、筋肉の収縮を司るタンパク質と結合することで、イカの意思とは無関係に足が自律的にバタバタと動き始めるのです。
※ 音量に注意してご視聴ください。
以上がイカの踊り出す科学的なメカニズムの全貌ですが、この筋肉の収縮反応を起こすには身体活動のエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)が残っていなければなりません。
ATPは死んで時間が経つごとにどんどん失われていくので、イカの踊り現象を起こすにはやはり死んだ直後でなければならないのです。