在米の中国人経済学者、程暁農(Cheng Xiaonong)は「中共やソ連の政体は個人集権と集団指導の間を振り子のように揺れ動く」と唱えている (以下は要旨)。
個人集権の時代は、急激な工業化や軍隊建設を行うために国民に耐乏生活を迫り、党内の異論を封殺するために、個人崇拝や反対派の粛清を繰り返すので、社会に深刻な後遺症をもたらす。
個人集権の後には、後遺症を癒して政治の安定を図るために集団指導制がとられる。民心の安定を図るためにカネを使い、幹部の腐敗が蔓延する高コスト統治モデルが採用される。そうすると、今度は腐敗や金権主義などの弊害が深刻化する。
そうすると、再び体制を救おうとする救世の英雄が出現して、個人集権を復活させる……
程暁農「中国再临接班人之争?」
習近平氏の「個人集権」も、「教科書に出てくるような」負の側面が目につき始めた。今後経済が停滞していくにつれて諸矛盾は深刻化していき、中国という振り子は集団指導の方向に振れ戻そうとする運動モーメントを蓄え続けていくだろう。つまり、民主化から離れて実現した習近平氏の個人独裁は、何時までも続けられる訳ではないということだ。
中国が個人集権と集団指導の間で揺れ動くのなら、バランスの良い中間地点を見つけて、そこに収斂(しゅうれん)すれば良さそうなものだが、不幸なことに、大国中国は「分権」を取り入れて平らかに治まった歴史的経験をしたことがない。
振り子の振れ戻しに伴って、中国と中国人が大乱に見舞われないことを願う。そうなれば、近隣の我々もタダでは済まないからだ。
編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2025年1月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。