日本美容外科学会「高い倫理観をもって行動するよう」

 騒動を受けて日本美容外科学会は以下内容の声明を発表。

「医療従事者としての倫理観を著しく欠いたものであり、断じて容認できるものではありません」

「美容外科医としてその肩書を用いる以上、社会的責任を伴う行動が求められることを強調したいと思います」

「今後も全ての美容外科医が高い倫理観をもって行動するよう、学会として努力を続けて参ります」

 声明文では医療従事者としての倫理観に繰り返し言及されているが、医師に求められる倫理観とは何なのか。前出・新見氏はいう。

「大学医学部のなかには、医療倫理に関する授業を設けているところと、ないところがあります。かつて医学部のカリキュラムは1~2年次は医学と直接的な関係がない一般教養を学び、3年次から医学の勉強をするかたちでしたが、昨今では医師国家試験が難化していることも影響してか、1年次からみっちり医学の勉強をするかたちになっているところが多いです。18歳ぐらいの時点で一定の倫理観を持っている人もいれば、そうではない人もいるでしょうし、社会人が持つべき倫理観を持たないまま医師になる人もいるかもしれません。

 今回の件でいえば、医師、もしくは美容外科医は倫理観が欠けているのかどうかという議論は正しくはなく、単に個人の資質の問題でしょう。どのような職業の人であれ、多くの人はご遺体の前で笑顔で記念写真の撮影をするという行為はしないでしょう。ですので、医師としての倫理観がどうかという問題ではありません。

 また、今回の件と直接的な関係はありませんが、美容外科をめぐっては近年、注目されているある変化がみられます。一般的に医師は医師国家試験の合格後に2年間、臨床研修に従事し、その後の数年間は専攻医(旧・後期研修医)として働いた後に専門医資格を取得しますが、近年では臨床研修を終えるとすぐに美容クリニックに勤務する人が増えており、『直美(ちょくび)』といわれています。その数は毎年2%ほどといわれていますが、これは結構大きな数値です。一般的に医療の現場で前期臨床研修を終了していなければ、臨床業務は行えないということになっており、美容外科は形成外科に含まれるため、これまでは形成外科医が専門領域の一つとして行うものでした。直美が増えている理由は一概にはいえませんが、現在、医師の賃金は一般的な会社員の1.5~2倍ほどで、大企業社員のほうが高いケースは少なくなく、大学病院や一般的な病院の勤務医よりも賃金が高いからという理由ですぐに美容クリニックに勤める人もいるかもしれません。ちなみに、大学病院の経験豊富なベテラン医師が大学を辞めて美容クリニックに勤務するというケースも出てきています」