私自身は、専門を国際情勢の分析の分野においている。日本の存在の縮小は、国際関係全体にもそれなりの意味を持つが、もちろんまずは日本外交にとって深刻な意味を持つ。今までのような外交では通用しない、ということだ。

日本は日米同盟を外交の基軸に置いているが、アメリカの世界最大の軍事力を持つ国であるだけでなく、そもそもGDPが日本の7倍以上の規模を持つ超大国である。約4兆ドルの日本のGDPは、アメリカのカリフォルニア州一州のGDP規模と等しい。広大な太平洋を挟んでいるとはいえ、アメリカは日本の隣国である。日米同盟を基軸にした外交は、今後も柱にはなるだろう。

しかし、ソ連の封じ込めの前線基地としてアメリカが日本の戦略的意義を見出していた冷戦時代のような事情はない。世界経済の17%のシェアを誇る経済力を持っていた時代の日本のような魅力はない。価値は下がる一方だ。アメリカに見放されないためにも、日本が自らの失策で安全保障環境の悪化を招くことなどがないように、周辺国その他との良好な関係の維持にも努めなければならない。

そのためにはアメリカと離反しない範囲で、アメリカ以外の諸国から信頼される外交姿勢をとっていくことが大切だ。ガザ危機をめぐる情勢など、アメリカが国際的な孤立も辞さずICCから逮捕状を発行されている人物の過激な政策を擁護しているような場合、日本外交の立ち位置も、非常に辛いものにはなる。

しかし漠然と追随しているだけでは、結局はアメリカ人の信頼も得られない。突出する必要はないが、世界の諸問題に真剣な関心と懸念を持っていることを、機会を見ながら表現していくことは、大切であろう。

クアッドの盟友となったインドのGDPが、日本のGDPを追い抜くのが、2025年であろうと言われる。ひとたび抜かれた後は、インドの経済規模は、日本の2倍、3倍となっていくだろう。日本のGDPの方が大きかった時代に、どれだけの信頼関係を築けていたかが、問われていくようになる、ということだ。