結果、個人の性別認識について、非常に興味深い事実が判明します。
性同一性は異性の体を所有すると大きく変動する
実験は頭部にヘッドマウントディスプレイをつけるVR空間で行われました。
VR空間の映像は非常にリアルであり、ぱっと見ただけでは背景も人体も現実と区別がつきません。
この状態で視覚的に男性に女性の体、女性に男性の体を体験してもらと当時に、現実での体へのタッチをVR空間での映像と同期させました。
現実での体へのタッチとVR空間での映像の組み合わせは、ほとんどの被験者に強烈な錯覚をうみだし、心理テストを行った結果、男性は自己評価から男性らしさが薄れ、女性は女性らしさが薄れていることが判明しました。
また異性の体を持つことは、参加者の心の性別を異性のほうにけん引する効果があることもわかりました。
異性の体を持っている状態では、本来の男らしさや女らしさに対する信念や既成概念が大幅に取り除かれていたのです。
この事実は、個人の認識する自分の性別が、外観の変化に対して非常に動的に反応する脆弱なものであることを示します。
またこの性同一性の脆さ(流動性)は、自分の体の持続的な確認が、自分の性を認識する上で直接的な働きをすることを意味します。
そのため異性の体を所有しているという幻想は、男の中の漢のような男性らしさにあふれている人間でも、乙女にしてしまうようです。
VRで得た新たな体は心を癒してくれるかもしれない
今回の研究により、性同一性の維持が外観的な要因に大きく依存していることが明らかになりました。
人間は性同一性を維持するためには、自分の体の性を持続的に確認する必要があったのです。