(※)2024年1月に横浜FCへ期限付き移籍

鈴木淳之介 写真:Getty Images

夏場に施された修正とは

湘南のビルドアップが安定し始めたのは、第18節名古屋グランパス戦の後半や第19節FC東京戦あたり。基本布陣[3-1-4-2]のウイングバックが安易に自陣後方や味方センターバック付近へ降りなくなったこと、そして3センターバックも極力ペナルティエリアの横幅から出ない立ち位置をとり、外側と内側(左右)どちらにもパスを出せる状況を作ったこと。こうした攻撃基盤が出来上がったことが、夏場の躍進に繋がった。

最終スコア5-0で大勝した7月14日の第23節ジュビロ磐田戦でも、鈴木淳之介、キム、DF髙橋直也による3バックは概ねペナルティエリアの横幅に収まる立ち位置をとり、中央とサイドどちらにもパスを出せる状態を維持。これによりパスコースを限定しきれなかった磐田陣営の守備の出足は遅れていた。

磐田戦では池田昌生と茨田陽生の両MF(2インサイドハーフ)が早いタイミングで相手最終ラインと中盤の間へ立ち位置を移したため、攻撃配置が[3-1-6]に近い形となっていたが、試合を重ねるごとに湘南最終ラインと2インサイドハーフの距離感は良い塩梅に。相手のボランチ(守備的MF)やサイドハーフの斜め後ろに立ち、味方の縦パスを引き出すのが得意な池田と茨田の活躍により、湘南は7月10日の天皇杯3回戦(東京ヴェルディ戦)以降も連勝を飾る。8月11日には当時J1リーグ首位に立っていた町田の堅守をも打ち砕いている。夏場に稼いだ勝ち点が、J1残留に向け物を言った。


鈴木章斗 写真:Getty Images

シーズン終盤に気を吐いたのは

2024シーズンのリーグ戦で11ゴールを挙げたFWルキアンが、第30節アルビレックス新潟戦で相手選手を蹴りつけ一発退場。その後同選手に3試合出場停止処分が科され、J2降格圏の18位との勝ち点差1の17位に沈んでいた湘南に暗雲が漂ったが、福田翔生と鈴木章斗の両FWがこの穴を補って余りあるパフォーマンスを披露する。2人とも相手最終ラインと中盤の間に立つタイミングが絶妙で、これにより湘南のパスワークが円滑になっている。福田と鈴木章斗は共に今季リーグ戦10ゴールと、ルキアンと同等の得点力を示した。