この事業所調査と家計調査の雇用者数の差が生じている一因は、複数の仕事をかけ持ちしている人が増えているためだが、仕事をかけ持ちする人は2022年1月から2024年11月の間に約110万人増えただけなので、これだけでは説明が付かない。

※ 1人が複数の仕事をかけ持ちしている場合、家計調査では雇用者数は1であるのに対し、事業所調査ではカウントが複数になる(例えばAさんがX、Y、Zの3社で働いている場合、家計調査では雇用者数1人、事業所調査では雇用者数3人となる)。

よって、この2つのデータ差からも非農業部門雇用者数が大幅に下方修正されてもまったく不思議ではない。(参考までに家計調査は年次改定の対象ではない。)

次に、QCEW(Quarterly Census of Employment and Wages)を見てみる。こちらは、米国雇用の 95% 以上を網羅する雇用者から報告された雇用者数と賃金を四半期ごとに公表するもので、サンプル数は1,220 万事業所に及ぶ。このQCEWを基に「County Employment and Wages」というレポートが四半期ごとに出されており、そのレポート内の雇用を見ることで年次改定値の参考値とすることが可能だ。

というのも、過去の実績から、年次改定後の非農業部門雇用者数(以下表「年次改定後」)と「County Employment and Wages」で示される4-6月期の全米雇用者数(以下表「QCEW(Q2)」)はほぼ同じになることが多いからだ。

1:年次改定前と年次改定後の各年3月の非農業部門雇用者数(季節調整済) 2:年次改定幅=非農業部門雇用者数改定幅(年次改定後-年次改定前)

上記表内「年次改定前」と「QCEW(Q2)」から算出された2024年の改定前乖離率は1.5%と、他の年と比較してかなり大きい。ここからも下方修正の確率が高いことが分かる。