残念ながら、それはあまり考えられません。

手足がないスライムにとって長距離にわたり逃げる獲物を負い続けるのは困難です。

しかし希望はあります。

肉食動物の狩りのスタイルの中には「待ち伏せ型」というものも存在します。

その代表的な存在は「猫」です。

猫はネズミなどの存在を検知すると、巣穴の前や物陰に潜み、獲物が間合いに入った瞬間に素早くとらえます。

長距離の追跡が難しいスライムが捕食行動をするとなれば、猫のような待ち伏せスタイルをとることになるでしょう。

半透明な体の利点を生かして環境に溶け込み、前方配置した目で獲物が射程圏に入ったことを確認すると、跳躍を行い、巨大な口で一気に飲み込むわけです。

スライムの狩りのスタイルは猫と同じく待ち伏せ型だと考えられます
スライムの狩りのスタイルは猫と同じく待ち伏せ型だと考えられます / Credit:clip studio . 川勝康弘

こうして、スライムの見た目に注目してみると、その内部には多細胞生物としての複雑な構造や、高度な感覚能力、さらには捕食者としての戦略までもが潜んでいる可能性が見えてきました。

「単純でかわいい」だけでは語れない、スライムという存在の奇妙さ、奥深さを感じることができたのではないでしょうか。

しかし、これでスライムの謎がすべて解けたわけではありません。

スライムはドラクエ世界の成功者

ドラクエ世界を彩る無数の生物たちの中で、ひときわ目立つのは「スライム系」の多様なラインナップです。

青いスライムをはじめ、赤いスライムベス、ぶちスライム、メタルスライム、ホイミスライム、さらには貝殻をまとったマリンスライムまで、環境も生態も異なる多種多様なスライムが存在します。

こうした豊富なバリエーションは、強力なモンスターや華やかなドラゴンたちに隠れがちな存在ながら、実はスライムが「生物学的成功者」であることを示唆しています。

人気モンスターであるスライムはドラクエの続編が出るたびに新たな種が追加されてきたという大人の事情があるからでしょう。