■もう一つの事実
さて、もしこのような劣性疾患を引き起こす遺伝子を持つ人が子どもをもうけても、通常それが次世代まで受け継がれることはない。同じ欠陥遺伝子を持つ配偶者と出会うことなどほとんどないからだ。しかしそれが子孫たちに代々受け継がれてしまったファゲイト一族の場合、さらに驚くべき背景があったようなのだ。
なんと、彼らの劣性疾患は、一族間の血族結婚によりもたらされていたのだという。
ファゲイト一族が暮らすトラブルサム・クリークは、20世紀前半まで地域の外へ出るための鉄道もなければ道路も限られている完全に孤立した地域だった。そのため、集落はいつまでたっても小さいままで住民も限られており、一族の多くが、近隣に住む従兄弟や親族と結婚していたのだ。中には、自分の叔母にあたる人物と結婚したという例もある。つまり、ファゲイト一族とは近親交配の家系を持つ一族であったのだ。