最近メディアなどで公然と「日本人は貧乏になった」と耳にすることが増えてきました。今まではそんなことを言ってはいけない、という風潮があったのですが、貧乏だということを認識したのでしょうか?
貧乏かどうかは絶対論と比較論があると思います。絶対論とはどうやっても暮らせないという意味で、比較論は海外や他人と比べて、ということになります。個人的には円安で外国人が日本であふれ、彼らがホテルや観光地の飲食代など一部の物価を押し上げ、日本人が楽しめなくなったと嘆き、恨み節になっているのかと思います。その外国人はディープな地域や店にまで浸食し、日本人が知らない辺鄙なところや街の食堂にも出現します。
私は日本が貧乏だとは思わないのですが、私を含め、欲が少ないのだと感じています。お勤めの方は「雇用の保証という引き換えに安めの賃金で我慢してね」という取引に応じています。私が欧米のように「給与は2倍、だけどクビ切りありで雇用の流動化を図ればよい」といえばボコボコに叩かれます。故に「じゃあ、わかった、お安めの給与でよいのですね」としか私はお答えできないのです。
他に代案はないのか、と言われたら会社の数を減らしなさいとも申し上げ続けました。これについては今後、加速度的にM&Aが進むとみています。業界再編成がさらに進む構図です。今般、ホンダが日産と三菱で大同合併する準備を開始することを正式に発表しました。これなども体力がない日産というより優秀な人材がいなくなった日産をこれ以上放置できないというお上の声を反映したものでしょう。なぜお上かといえば雇用です。日本は雇用の保証制度があるのですから日産と関連会社の社員家族が路頭に迷えば政権が揺らぐほどの問題になります。
今年のM&Aは前半はそこそこだったものの7‐9月期ぐらいから増え始め、10‐12月期に一気に増えてきた気がします。最近ではソニーのカドカワ買収などもありましたが、目につくのは飲食業界の買収です。この数か月だけでもすかいらーくによる資さん買収、ワタミのサブウェイ、サンマルクの牛かつチェーン、ココイチの大阪のラーメンチェーン、変わり種では森トラストの老舗ベーカリー買収というのもあります。飲食業界はコロナ後の反動とゼロゼロ融資が実質的に企業の体力を奪う結果になったとみており、人材不足と人件費高騰、米などの食材費高騰で勢力地図が大きく変わったとも言えます。