学生ローンを管理する公共組織(Student Loans Company)によると、学生が抱える負債額は1人当たり平均で4万8470ポンド(約954万円)に上るそうです。これから就職する学生にとって、心の重荷になりそうな金額です。
ただし、すぐの返済は要求されていません。就職後、年間収入が2万5000ポンド(約492万円)を超えてから支払いをする形をとります。支払い開始から40年を過ぎたら、ローンは帳消しになるのですが、それでも、20歳そこそこで大きな負債を抱えるのは楽しくはないでしょう。
値上げの効果今回の増額で大学の経営は健全化するのでしょうか?
多くの大学はこのぐらいでは不十分と見ているようです。12年以降、授業料が微増でほぼ凍結状態となってきたことや、政府が授業料の上限を設定しない海外留学生の数が減少気味であることなどが理由として挙げられています。
シンクタンクの財政研究所(IFS)の試算によると、今回の値上げで大学側には年間3億9000万ポンド(約786億円)の収入になるそうです。でも、大学&カレッジ雇用主協会の試算では、先月末に発表された政府の秋季財政報告書で事業主が負担する国民保険料を引き上げることになったため、純収入は1800万ポンド(約35億円)に減ってしまうそうです。
より狭き門に?懸念になるのは大学の門がより狭くなってしまうことです。生活援助ローンの金額だけでは生活費全額を負担できませんので、裕福ではない家庭の出身者は大学進学を諦めがちになるかもしれません。英医師会は大学授業料増額によって、医療界に進みたいと思う若い人を阻害してしまうと指摘しています。
26年度以降の授業料もインフレ率と関連付けるのかどうか、政府は明らかにしていません。もし今後インフレ率と同時に上昇していけば、29年度の授業料の限度額は1万680ポンド(約210万円)になるとIFSは予想しています。