欧米の映画やTV番組では幽霊はまだ生きている人間と同じように取り扱われるケースが多い。その意味で、幽霊は欧米社会では市民権を有している。日本の場合、幽霊は単に好奇心や恐怖心の対象として取り扱われることがまだ多いのではないか。
当方が好きな映画「希望を救え」では、病院で最高の外科医と言われていたチャーリーが交通事故でコマ状況(昏睡)に陥り、体から霊が抜け出し、霊人と対話できるようになったことからこの映画のドラマは始まる。
事故から回復し、再び勤務するチャーリーは手術中に意識を失った患者が霊人となって自分の前に現れ、話しかける体験をする。患者は自分の病歴などをチャーリーに話したり、家族問題を相談する。チャーリーは最初は驚いたが、霊の存在を次第に生きている人間のように感じ、コマ状況で霊が肉体から離れてしまった患者の人生相談に応じる。チャーリーが手術前から患者の病気の原因を知っていることに同僚の医師たちは驚く。チャーリーには患者が教えてくれたのだ。
また、カナダのTV映画には霊人(幽霊)が出てくる番組が多い。カナダ騎馬警察官の活躍を描いた「Due South」や、劇団の世界を演出した「スリングス・アンド・アロウズ」もそうだ。それもホラーな怖い話ではなく、霊人が日常生活の中で自然に出てきて、生きている人間と会話を交わすストーリーが多い。
日本のメディアでは一時期、安倍晋三氏が首相時代、なぜ公邸に住まず、私邸から首相官邸に通っているのかで話題を呼んだことがあった。その際、公邸には幽霊が住んでいるからではないか、といわれたほどだ。それなりの理由が報じられた。産経新聞によると、「公邸は昭和11年、旧陸軍の青年将校が起こしたクーデター『2・26事件』の舞台となっており、犠牲者の幽霊が出るとの噂話がある」という。
安倍さんの後継者の菅義偉元首相は議員宿舎に寝泊まりしていたという。岸田文雄前首相は公邸に住んでいたが、幽霊騒動は聞かない。要するに、公邸の幽霊は誰でもいいというわけではないのだ。相性の合わない首相の前には出現しない。出てきてもそれが幽霊だと分らない首相の前には出てきたくないのではないか。