近年の飲食店はレベルが上がったと思います。いや、上がらないと経営できないところまで追い込まれています。それはインスタ映えが味や価格と同じくらい重要な選択エレメントになってきていることもあるでしょう。事実、メニューに並ぶ写真にしろ、実際の盛り付けにしろ「WoW!」というものが増えてきたように感じます。

ブルームバーグによると、2025年にはやる食べ物は巻き寿司だとか。それも海苔を全部巻くのではなく、上の部分は巻かずにシャリの上に具材のトッピングで魅せるのです。おにぎりの巻き寿司版ですね。絵的には確かにこちらの方が圧倒的に受けます。カラフルな色合いの様々な具材がのった手巻き寿司を「はい、どうぞ」と手渡されれば思わず、「おいしそう」という言葉がこぼれてきそうです。これなどもインスタ映えを意識したトレンドの典型です。

では「映え」は写真だけなのか、と言えば私が感じた最近のトレンドは、自己アピールも「映え」が必要なのではないかという気がするのです。

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数日前にご紹介したTimeleszのオーディション番組、「タイプロ」で節目となる第5次に進む12名の審査発表があったのですが、その番組を見て思ったのはハンサム、ナイスルッキング、踊りも歌も上手で格好良い若者たちがよく泣くのです。特に審査で落選した6名の泣きぶりはカメラワークもあったのでしょうけれど「パフォーマンスか?」と思わせるほどでした。多分、これが「映え」になるのではないかと私は分析しました。

最近は自分の感情を表に出すことなく、能面面(のうめんづら)で日々の生活が楽しいのか、苦しいのかすら読み取れない方々が増える中で、ダンスの躍動感と笑顔や涙という人間らしさが私には奇妙に懐かしかったのです。昔テレビで見た甲子園球児のような感じです。その点でオーディションに出る人たちは20代中盤ぐらいの人が多い中で「そうかぁ、もしかしたら彼らは10代の青春時代に感情表現をする機会がなかったのではないか」とすら勘繰ってしまいたくなるのです。