これらの結果から、石垣島のミナミキチョウはボルバキア(wFem系統)が広がることによって、性比がメスに大きく偏ったことが実証されました。
今回の調査は、野外においてボルバキアがわずか4年という短期間で宿主の性比を極端にメス化できることを示した初の成果です。
では今後、島中の9割がメスとなってしまったミナミキチョウたちはどんな運命をたどるのでしょうか?
以前、別の研究では、リュウキュウムラサキという蝶が一時、オス殺しをするボルバキアの蔓延によって著しくメスに偏ってしまったものの、数年でオスメスの性比が1:1に戻った前例が知られています。
これはボルバキアが引き起こす生殖操作への抵抗性を宿主が獲得したことで、やられっぱなしだった蝶が性比を回復できたからのです。
そのため、崖っぷちに立たされたミナミキチョウも抵抗性を獲得できれば、性比を回復できるかもしれません。
しかし、研究者らはこのままメス化が進行すれば、オスが完全にいなくなることで、石垣島のミナミキチョウが絶滅に向かう恐れもあるといいます。
チームは石垣島のミナミキチョウとボルバキアの攻防の行く末を見届けるために調査を続ける予定です。
ひとまず、ボルバキアが人をターゲットにする細菌じゃなくて助かったといえるでしょう。
東大がオスだけを狙って殺す細菌タンパク質「Oscar(オス狩る)」を発見!
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参考文献
島中がメスばかり -昆虫の細胞内に生息する細菌が宿主の野外性比を急速にメスに偏らせる過程を世界初観測-
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/163271.html