2008年の調査で、石垣島に生息する「ミナミキチョウ(学名:Eurema hecabe)」に、「wFem」と呼ばれる系統のボルバキアによってメス化が起きていることが明らかになりました。

このwFemを保有しているメスを実験室に持ち帰って飼育したところ、生まれた子供はすべてメスになることが確認されています。

ただし、その時点におけるミナミキチョウのwFem保有率はわずか8%に留まっていました。

そこで研究チームは、「ボルバキアの保有率がここから徐々に上昇していくだろう」と予測し、2015年から石垣島のミナミキチョウの「wFem保有率」「オスとメスの割合(性比)」を追跡観測することにしました。

交尾中の石垣島のミナミキチョウ
交尾中の石垣島のミナミキチョウ / Credit: 農研機構 – 島中がメスばかり -昆虫の細胞内に生息する細菌が宿主の野外性比を急速にメスに偏らせる過程を世界初観測-(2024)

チームは2015年から2022年にかけて、石垣島で合計1392匹のミナミキチョウを採集し、オスメスの性比を記録。

その結果、チームも驚くべき現象が起きていました。

なんと2015年から2018年にかけてほぼ1:1だったオスメス比が、2019年から急激にメスに偏り始め、2022年には実に93.1パーセントがメスとなっていたのです。

A:各年の採集地点ごとの性比、 B:各年に採集した全個体に占めるメスの割合
A:各年の採集地点ごとの性比、 B:各年に採集した全個体に占めるメスの割合 / Credit: 農研機構 – 島中がメスばかり -昆虫の細胞内に生息する細菌が宿主の野外性比を急速にメスに偏らせる過程を世界初観測-(2024)

さらに採集したメスのwFem保有は2008年に8%だったものの、2017年以降にこれまた急激に上昇し始め、2022年にはメスの87%がwFemを保有していたのです。

また、同島の性比がメスに偏り始めた2019年にメスを実験室に持ち帰って飼育した結果、wFemを保有していた個体は確実にメスしか産まないことも確認されました。