新聞の質の低下ばかりでなく、購読者がネット媒体にシフトし、新聞を読む層が減れば、順位も必然的に下がってくる。そういう面があるにしても、新聞の社会的プレゼンスの低下は日米ともに共通しています。
新聞各紙はこうした危機をどう乗り越えていくのでしょうか。新聞は言論の多様性が持ち味ですから、例えば読売と朝日、毎日と産経が合併すること水と油であり得ない。最近、発表されたホンダ・日産の合併のようにはいかない。かつてのルノーと日産のように、海外企業との統合もありえない。朝日とニューヨーク・タイムズが統合することも考えられない。株式も上場していないから、統合、再編の障害になる。
トヨタとソニーのような異業種間の業務提携もメディアでは考えられない。ネット企業にとっては、新聞のニュース取材、解説力は欲しくても、新聞社の販売店網、印刷工場はネットで代替できるからいらない。新聞社側は困る。編集、印刷、販売の垂直統合が強みだった新聞社にとって、それらが経営合理化、経営再編のじゃまになるのです。
ニューヨークタイムズ・デジタル版は契約者数が1000万人を超え、売上は11億㌦(1600億円)です。こうした選択ができるのは、日経新聞でしょう。日経は紙の新聞の販売を他紙の販売店に委託するケースが多かったのと、経済・金融情報はデジタル化に向いています。読売、朝日などは不動産収入で新聞部門の赤字を補填できるにしても、いつか限界がくるでしょう。
よく「ナベツネさん亡きあとの読売新聞はどうなる」という問いが聞かれます。この問題は読売に限ったことではありません。多くの新聞社のとっての問いでしょう。また、新聞社によっては、主筆制(社論、編集方針決定の組織的な一元化)を続けるでしょう。主筆が存在しても、もう「紙媒体の帝王」のような人物が現れることはないと思います。
編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2024年12月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。