このように柔軟な発想ができたのは、資金力に乏しい子会社だからこそだ。そして、その発想を親会社であるキリンは評価した。キリン・シーグラムではなくキリン本体の流通網で販売することとなったのだ。

結果、「氷結」は、2021年7月の発売後半年で611万箱、翌年22年には2,230万箱を売る大ヒットとなる。サントリーの1,780万箱を抜き、キリンは缶チューハイ市場のシェアトップとなった。

「異質」を排除するのではなく「異能」と認める。文化の違いを認める「組織文化」が、キリンには根付いているのではないだろうか。

キリンホールディングスプレスリリースより

Blackmoresとファンケルに期待するもの

キリンが、今後伸ばそうとしているのはヘルスサイエンス事業である。そのため、23年には、主に東南アジア・中国で健康食品事業を展開する「Blackmores」を完全子会社化、24年9月には、健康食品・化粧品事業を展開する「ファンケル」を連結子会社化している(※)。「異能」の取り込みが新事業でも進んでいるのだ。

※ 年内には完全子会社化を見込む

ファンケルプレスリリースより

「Blackmores」とのシナジー効果は、既に表れている。キリンは25年にプラズマ乳酸菌の台湾での上市(※)を予定している。これがスピーディーに進んだのは、Blackmoresが持つ規制当局への対応力によるものであり、キリン単体では難しかったという。

※はじめて市場に投入すること

一方、「ファンケル」とのシナジー効果が表れるのはこれからだ。キリンが期待するのは、ニーズ分析と販路拡大である。ファンケルは売上の7割を自社チャネルが占めているため、顧客ニーズの分析力が非常に高い。また、国内スキンケア市場で強いブランドを構築している。

キリンの免疫ケア商品による「体の内側」へのアプローチと、ファンケルのスキンケア商品による「体の外側」へのアプローチの相乗効果も期待できる。この相乗効果を国内で高め、海外展開も見据えているという。

キリンシナジーが最大化された日常