■ビュリダンのロバ
14世紀フランスのスコラ哲学者ジャン・ビュリダンにちなんで名付けられた思考実験。決定論や行き過ぎた合理論に対する反論として提示されたが、出典は定かではないそうだ。
「ここに自由意志を持たず、常に合理的な選択しかできないロバがいる。今、このロバから同じ距離の2地点に全く同じ量の干し草が置かれている。どちらの干し草を選んでも、合理的に得したり、損したりすることはない」
問い:ロバはどちらの干し草を選ぶか?そもそも、このロバは選択することができず、餓死するまで悩み続けるだろうか?
およそ決定というものが、合理的になされるならば、このロバは合理的にどちらの干し草も選べずに飢え死にする。だが、そんなことは実際起こらないだろう。ロバはどちらかの干し草を食べることを決定するはずだ。だとすれば、決定には合理性以外の何らかの要素やランダムな偶然性、あるいは自由意志が含まれていなければならないだろう。
この思考実験の回答は決定論者の間でも意見が分かれている。たとえば、決定論者の1人であるスピノザは、このロバは餓死しないとしているが、ロバはそのまま餓死すると言い切る決定論者もいる。他にも、選択肢にはそれぞれを分ける差異が必ずあると主張する者もいるようだ。