お迎えに来たA君ママさんが悲劇のヒロインに

そして、気付けば午後2時過ぎ。私はハッとしました。お迎えの時間になる……。A君ママさんになんて声をかければ良いのか、必死に思考を巡らせました。
「いや――これは余計なお世話か。」と、保育士である本来の役割を果たすまでだと悟るのです。

A君ママさんがお迎えにきました。突然連絡を途絶えたことを気にしているのか、どことなくいつもの明るい表情は一切なく不安な面持ち。

それどころか、私を見つけた瞬間に大声で泣き出してしまいました。「なんで?!なんで、私ばっかり不幸になるの?!」と、A君ママさんはよく分からない泣き喚きが始まり、幼稚園内で大人が号泣するところは長年務めた保育士の私でも、もちろん初めての経験です。

「私は!こんなに頑張っている!!でも!!子どもが言うこと聞かないのよぉ!!」と、もはや発狂に近い状態で回りに同情を乞う様子にも見えましたが、誰も何も反応せず、そそくさに「行きましょ。」とお子さんと共に帰っていくママ友たち。

私は泣き喚く彼女の肩を叩き、「この状況をご理解いただけますね?このような事態になっては、当園として正当な対応をさせていただきます。」と声をかけるのが関の山でした。