なぜ日本は取り込まれるのでしょうか?最大の理由は岸田元首相が苦しんだ自民党の政治資金不正問題を通じて自民党の保守派の牙城が崩れたことが中国にとって非常に都合よい風となったことは否めないでしょう。その上、首相には石破氏が就任します。石破首相はどう見ても対中国穏健派であり、アメリカと一心同体という思想は強くは感じません。おまけに石破氏にとって好都合だったのは首相就任後間もないAPECで習近平氏と会談が出来たことであります。これは双方にとって非常に好都合だったと思います。当時のメディアは外見的にこの初会談を揶揄する声もありましたが、私は習氏が「イシバとはディールできる」と確信を持ったと思います。

故に今般、岩屋外相が訪中した時、様々な案件で前向きな検討がなされ、明らかな雪解けムードを醸し出したことは否定できないと思います。

ではこの方針が日本にとって吉と出るか、これはもう少し様子を見なければなりませんが、個人的には中国に取り込まれるリスクがあるとみています。特に2点、懸念すべき点があります。

1つは1月中旬にもセットされる予定の石破ートランプ会談で日米関係をどう表明するのかであります。アメリカの日本分析官は既に詳細のレポートを政権やトランプ氏に送っていることでしょう。それはたぶん、「イシバは中国に緩和的であり、アメリカの対中方針と合わない恐れがある」と。岩屋外相はベテランである同時に中道的で物事を吟味するタイプに見えます。石破氏とはウマが合うのでしょう。ここが強硬派人事を展開するトランプ氏からみてどう見ても意気投合できるとは思えないのです。

2つめの懸念は岩屋外相が今回、日本側の譲歩案として出した中国人ビザの超緩和的方策です。富裕層についてはなんと10年の観光ビザを新設したのです。これは禍根を残すと思います。メディアの反応は「爆買いが戻る」といったお馬鹿さんなトーンですが、とんでもありません。爆買いは本人たちの買い物ではなく、エージェントが中国国内の人向けに買い付けしていたような仕組みですが、これが取り締まり強化で出来なくなったことで爆買いが消滅したのです。