大統領選挙では、高騰インフレの社会しか知らない多くの若者が「1世紀前はアルゼンチンは世界でトップレベルの国であったのだ、それを復活させよう」と望んで、彼を支持。また元大統領のマクリ氏も彼が擁立した候補者が破れ、その集まった票をミレイ氏の決戦投票に回させた。そのお陰でミレイ氏が勝利した。
昨年12月、ミレイ氏が大統領に就任した。そこで彼は奇跡を起こした。まだ1年も満たないのに、アルゼンチンの長年の慢性病であった高騰インフレから脱却させたのである。この業績が如何に偉業であるかを以下に説明したい。
アルゼンチンは戦後から慢性的にインフレを抱えて来た国だ。1944年から高いインフレを記録して来た。インフレ率が2桁の年は44回、3桁が15回。それに加え、1989年は3080%を記録し、1990年は2314%という4桁のインフレも記録している。
なぜこのように高いインフレが続くのかというと、政府の歳出が歳入を常に大きく上回っているからである。そして財政の赤字分を紙幣を新たに刷って市場にばらまくことを繰り替えして来たからである。このやり方は正にインフレを招く典型的な例だとして経済のテキストになっている。それをアルゼンチン政府は長年繰り返して来たのである。
歳出が多いというのは、社会主義国にある政府が色々な分野に補助金を支給するからである。電気代、水道代、教育費、公共運送機関、ありとあらゆる部門に補助金が支給されている。
それがインフレを招くものだとして、市場経済をベースに戻そうとした中道右派のマクリ元大統領はこの補助金制度を廃止した。その結果、例えば電気代や水道代は300%の値上がりをするといった事態を招いてインフレがさらに高騰した。
多くの市民は補助金制度をありがたく思っていたが、その補助金の資金源は政府が毎年新たに刷った紙幣から賄っていることを知ってはいるが、それに呼応して来たのである。因みに、アルベルト・フェルナンデス前大統領の時に刷っていた紙幣のボリュームは毎年のGDPの20%程度であった。その紙幣のボリュームの多さから、アルゼンチンの造幣局だけでは間に合わないということでスペインの造幣局でもアルゼンチン紙幣を印刷していた時期もあった。