このため、ドイツの小売会社はヨーロッパ中の電気を買いあさることができ、ドイツは大停電を避けることができたわけです。しかし、本来、ドイツの需給逼迫とは関係のない、国内の需給バランスはしっかりとれていたノルウェーが電力価格の高騰という被害をこうむることになりました。
自然エネルギーを推進する人々の中には、
国際的な送電網を拡大することで、太陽光や風力発電の出力が変動しても、余剰電力を他国に売ったり、不足時には他国から購入したりできる 日本もヨーロッパを参考に、ロシア、韓国、中国などの近隣諸国と送電網を連携することで、再生可能エネルギーの導入量を増やせる 将来的には、日本がエネルギー輸出国になる可能性もある
などという意見があります。
しかし、こうした国際送電網には、電力需給の不均衡が周辺国に悪影響を与えるという負の側面もあります。今回の事例は、その影響がむしろ大きいことを示しています。
ノルウェーと欧州を結ぶ連系送電線はすでに老朽化ノルウェーのニュースメディア「ヴィシェグラード24」のXアカウントによると、ノルウェーとヨーロッパを結ぶ2本の送電線があり、それらは900万KWの送電容量がありますが、2026年と2027年に技術寿命を迎えます。
これらの各国を結ぶ送電線には、重要な役割がいくつかあります。たとえば、「系統の容量を増やして周波数を安定させる」「緊急時に電力が不足した際、相互に融通する」などです。ただし、これらの仕組みが有効に機能するのは、各国が自国の電力供給に最大限努力し、それでもなお需給バランスが崩れた場合に限られます。そのような場合であれば、応援する側も最大限の協力を惜しまないでしょう。
しかし現状は異なります。ドイツは独自の判断で原子力発電所の閉鎖を決定し、大量の再生可能エネルギーを導入した結果、突然の電力不足や電力価格の高騰を引き起こしています。その負担を周辺国に押し付ける形で、この送電網が利用されているのが実態です。