しかし、電力の市場価格はドイツの価格に引っ張られるように、高騰しています。これは、ヨーロッパ各国は送電線で連系しており、ドイツの小売会社がヨーロッパ中の電力を買いに走ったためです。ノルウェーの、翌日電力オークションNo.2市場では、900EUR/MWhまで上昇しています。
ドイツの電力業界を襲う「暗い凪」ドイツの電力業界には、「ドゥンケルフラウテ(暗い凪)」という言葉が存在します。北海方面に発生する高気圧によってもたらされる現象で、「暗い」という言葉が示すとおり、厚い低層の雲により日光がさえぎられ、同時に「凪」となって風がほとんど吹かない状態を示す言葉です。
当然、太陽光発電や風力発電はほとんど稼動できなくなり使い物になりません。さらに都合の悪いことにこの現象のほとんどは10月~2月の寒い時期、すなわち電力需要の高くなる時期に発生します。今回の電力価格の高騰もこの「暗い凪」によってもたらされたものです。
図3は「地球の風」というサイトの画面キャプチャーで、地表面の風の向きや強さがわかるサイトです。線の本数が密になるほど、また地面の色が緑色になるほど強い風を示しています。
12月12日のキャプチャーです。ドイツ国内は風の強さを表す線はほとんど見えません。地図の色も真っ青になっています。気象現象には国境は関係ないなずですが、ドイツの国土を選んだかのように風が全く吹いていません。ドイツでは1年に2回~10回程度、この暗い凪現象が発生しています。
国家間連系送電線がドイツの電力価格高騰を周辺地域に拡散ヨーロッパは電源の周波数が50Hzで統一されていること、多くの国が地続きであることから古くから国と国の送電系統を連系して運用していました。
さらにソ連崩壊以降は、東ヨーロッパ諸国にも連系が進み、さらに大きな系統となって運用されています。ノルウェーからは対岸のオランダ、デンマークなどへ連系している送電線があります。これによりヨーロッパは1つの市場となって取引を行っています。