■破壊神カーリーと聖女テレサ
そもそもインドのコルコタは、女神カーリーにあやかる都市である。カーリーは「宇宙の母」ゆえに崇拝され、コルコタは「カーリーの街」を意味する。そんな街でマザー・テレサの活動は始まった。1952 年、彼女は死の女神カーリーを祀る古代寺院の敷地内に、瀕死の患者のための病院を設立したのだ。当初、彼女らは毎日カーリー寺院に行き、その門前で病人や死にゆく人々に奉仕した。こんな逸話が残っている。
ある日、何度注意しても立ち退かない修道女らに対して、ついに寺院側は怒り、また侮辱されたと感じた地元の人々が彼女らに石を投げた。しかしマザー・テレサたちは行政を説得し、廃寺院の一区画を病床として確保することになった。その後、伝染病(ハンセン病ともコレラとも言われる)が流行し、パニックに陥った人々は地域から逃げ出した。
しかしカーリー寺院には、その寺の祭司がまだ残っていた。彼は高熱を出して倒れていた。人々は祭司を置いて逃げた後だった。修道女らは祭司を看病し、ついに彼は回復した。そして目覚めた祭司が叫んだ。「私はカーリーを見てきた! それは、あなただ! マザー!」
また、あくまで噂に過ぎないが、マザー・テレサの個人的な祭壇には女神カーリーの図像が含まれていたとも言われる。