マザー・テレサ(1910-1997)といえば、言うまでもなく、世界に名だたるインドの聖人、コルカタの聖テレサである。カトリック教会の修道女にして修道会「神の愛の宣教者会」の創立者、2016年9月には聖人認定された人物だ。

■コルコタの聖女テレサの光と影

 貧富の差が激しいインドにおいて、病者や貧者への施しを行った聖人マザー・テレサにはさまざまな逸話がある。1973年にはテンプルトン賞、1979年にノーベル平和賞、1980年にインド最高の名誉であるバーラト・ラトナ賞を受け、1983年には故エリザベス2世から優秀修道会賞などを受賞した。

 その一方で生前から厳しい批判の目にも晒された。たとえば、ハイチやアルバニアなどの独裁者ら政治家との黒いつながり、世界各地の富豪からの資金提供、元フリーメイソン幹部にしてイタリア極右政党との交友など、闇深い噂は絶えない。何よりも、いよいよ死期迫るイスラム教徒やヒンドゥー教徒に承諾なく秘密裡に洗礼を施していたこと、ホスピス「死を待つ人の家」における医療体制の不備などは大問題として、その死後にも糾弾されている。これらについてはトカナでも扱った。

 しかし、また別方向の指摘もある。