この「背景情報」を深く知った上で考えないと、

・欧米の国でも普通にやっているような出入国管理上の当然の国家の権利を行使しているだけ

…の側面に対しても、

・〇〇人の人たち可哀想・・・日本政府はなんて非人道的で悪辣な制限をかけているのだ!最悪の人権抑圧国家だな!!!

…みたいな印象になってしまう。

そしてこういう誤解は入り組んでいて、ある側面に関しては日本政府のやり方が確かに非人道的に見える側面はあって改善を求めるべきだ(例えばクルド人にトルコ国内における迫害の実態が全くないとも言えない中、日本での難民申請はほぼ認められることはないという点など)けれども、それを「欧米でもどこでもやっている国家の当然の権利行使」まで破壊してしまわないように細部の制度を深く読み込んで適切な改善提案をしていく事が必要になる。

NHKの番組の当初の意図は、単純に「クルド人の人たち可哀想」という話になっていく流れがあったところ、橋本先生のレクチャーによって、

・とはいえ川口の住民の方々の懸念にはちゃんと対応しないとね ・そのためにも、出入国管理制度をどうするのか?という専門的な見地から、適切な着地点を探る必要がありますね

…という方向性に転換できたらしいです。

これはSNSでのいわゆる「排外主義」的な盛り上がりに対してどう対処していけばいいのか?を考える時にも大事なステップとなるはずです。

つまり、単純に

・「川口市住民の懸念などレイシズム(差別主義)に過ぎない」 ・「クルド人に在住許可が出ていないのは、欧米では考えられない人権抑圧国家である日本政府の悪辣さが原因だ」

こういう↑シャットアウト型の発言はそれ自体かなりアンフェアなものを含んでいて、こういう発言をリベラル側がすればするほど、「排外主義」は止めようがなくなるだろう、ということです。

では、橋本先生が提唱されているような「一歩踏み込んで受けて立つリベラル」のあり方とはどういうものでしょうか?

2. 川口市は今どれくらい「危なく」なっているのか?

川口市の問題にどう対処すべきかを深堀りしていく前に、まずは基本的な事実のおさらいなんですが、SNSを見てると北斗の拳的な「修羅の国」になってそうな印象になっている川口市は、どの程度「キケン」になっているのか?という話をします。

まずこの問題を考える上での基礎知識は、日本というのは過去20年ぐらいの間に「物凄く安全な国」になってるってことなんですよね。

一般的なイメージとしては「物騒な世の中になってるよねえ」ってみんな挨拶みたいに言ってますが、実際に刑法犯認知件数みたいなのは平成中期(平成14年=2002年がピーク)が一番高くて、そこから強烈に右肩下がりのグラフになっているんですよ。

だから、クルド人問題があろうとなかろうと、川口市のグラフも「この20年で強烈に右肩下がり」にはなっているんですね。

これは川口市が発表している資料からですが…

ただし!ここからが問題なんですが、20年間下がり続けてきたグラフが、令和3年以後ジワジワ増え始めてるんですね。

これは全国的な傾向で、コロナ明けの社会混乱に戦争始まったりインフレがあったり…というわけで、ほとんど世界中で同じように犯罪率は増加していると思います。

以下は警察庁発表の”全国の”グラフですが…

ある意味で現時点ではまだ「コロナ前の水準に戻った」という程度ではありますが、直近の%としては結構な伸び率(前年比17%)で伸びている。

さらにフェアに見ると、川口市単体のデータはまだ令和5年全体では発表されていないのですが、入手可能な令和3年→令和4年で比較すると、全国で5.8%程度に対して川口市は8.9%程度伸びています。この差が「クルド人(に限らず外国人)ファクター」だと主張するのは全く根拠がないとも言えないかもしれません。(”外国人による犯罪”としてカウントされている実数を外国人人口あたりで見ると、日本人一人あたりよりはある程度多めに出がちな傾向ぐらいは見られる。ただし正規の在留許可でなく公的に把握できてない滞在外国人が想像以上に沢山いるだけの可能性もあって証明はできません)

ただ、NHKの番組で橋本先生もおっしゃっていた通り、「実数としての犯罪率の増加」よりも問題なのは、「体感治安」の方の問題で。

これはたまたま昨日見つけた明星大学心理学部教授の藤井靖氏のxポストですが、

私自身も去年の夏の夜(23時頃)、出張の帰りに川口市近郊のあるコンビニに寄ったら、駐車場で外国人4、5人が酒盛りしてたんですね。 深夜に大声で話していたので嫌な感じはしましたが、気にせず普通に停めて、買い物してたら自車からバーグラアラーム(盗難防止警報装置)が鳴り響き、外を見たらその外国人たちが私の車をベタベタ触ったり、ドアノブをガチャガチャやったり、身体を押し付けて揺らしてるわけですよ。今にも上に乗ろうかという勢いで。 ちょうどレジだったので、コンビニの店員さんが、やれやれ感のある表情で「あれクルド人ですよ・・」と。 私が会計して外に出たら、すぐにビール缶片手にニヤニヤしながら離れていきましたし、車を盗もうとかでは無かったと思いますが、こんなん日本で普通に暮らしてて、あります?!治安が微妙な近所の都心某所でも、さすがにこんなことは経験ありません。 こんな日常だったら、そりゃあ川口に住んでる日本人は、自分や家族を守るため泣く泣く引っ越しを検討せざるを得なくなるわな、と思いました。これって、埼玉だけの問題じゃないですよね。ゆくゆくを考えたら、国が今ちゃんと対処しなきゃいけないですよね、いやマジで。

藤井靖氏のxポストより

↑大学教授らしくまあまあフェアな書きぶりですが、彼ら(クルド人)も「悪気」とかはなさそうというか、日本だと盗難防止装置が作動するほど他人のクルマに近づいて触ったりするのはかなりヤバいこと・・・という理解が薄い感じなのだと思います(海外じゃあの”警報”が鳴っててもいつもの事すぎて平然としてる国も多いですよね)。

こういう「価値観のギャップ」を抱えた集団が数千人単位で隣接して暮らしていればトラブルも当然起きる。

他にもSNSを見ると、クルド人の若者が乗ってるクルマの暴走運転とか、過積載で危険な荷物の運び方をしているトラックの映像はよく見かけますし、昨年クルド人の若者同士の喧嘩から病院で二派に分かれて100人が集まり乱闘になった事件があったらしく、そのあたりが住民の「体感治安」の悪化原因になっているらしい。

まとめると、

・現状では、「2002年の日本と比べるとまだ圧倒的に安全」というレベルではある(”修羅の国”ではない) ・ただし、データ的にも「全国比数%」の治安悪化が見られると言えなくもないし、なにより価値観の相違からくる「体感治安」の悪化は明らかに具体的な課題になっている

…という状況だ言っていいでしょう。

SNSでは、「警察はクルド人に対して弱腰で、日本人なら捕まってるような件が大量に見逃されているからこういうデータになっているので、もっと実際の治安は最悪になっているのだ」という話をする人もいますが、そういうのがゼロだと主張する根拠はないものの、クルド人は川口市の人口の1%もいない(約60万人に対して約数千人)事を考えると、少なくとも2002年の日本より圧倒的に安全だ、という主張は揺るがないレベルだと思います。

こういう「イデオロギーから統計を疑ってかかり、巨大な暗数があるに違いないと言い出す」みたいな話は、一部のフェミニストが日本には巨大な性犯罪の暗数があると言い出す話と似ていて、別にそうやって「”あの米国”より日本の方が犯罪が多い」みたいな無理やりな統計数字を妄想しなくても、例えば「痴漢だとか映画監督が女優に性行為を強要とか、そういう事件はなくしていきましょうね。女性の社会進出上の障害があったらできる限り解決しましょうね」っていう話を共有できれば十分なわけですよね(むしろ無理のある陰謀論をぶつ事は逆効果になってる側面があると思います)。

クルド人問題も同じで、

「(クルド系住民の影響と証明はしづらいにしろ)数%とはいえ全国比より治安の悪化が見られるし、何より価値観が全く違う数千人と共生する中でトラブルも増えているので何らかの対策が必要ですよね」

…という部分さえ共通了解にできれば十分なはずだと思います。別に「川口はもう普通の人は住めない修羅の国になってしまってるのだ!」と主張する必要はない。

全体として個人的な印象を述べさせてもらうと、

今の日本人の平均からするとヤンチャが過ぎる「ろくでなしBLUES」とか「東京リベンジャーズ」型の価値観で生きている血気盛んな集団が数千人も現代日本の街に転生してきたらトラブルになるのも当然

…というようなレベルの事が起きているのだと理解すれば実態をイメージしやすいと思っています。

3. 「受けて立つリベラル」の必要性

さっき書いた、「ろくでなしBLUES」とか「東京リベンジャーズ」型の直情型の人間が羊のような現代日本人社会に数千人転生してきたイメージを持ってもらったらわかると思いますが、これは明らかに「対策は何かしら必要」なんですよね。

右翼さんのメッセージは「何か対処しなくては」の部分においては圧倒的に正しくて、なぜならそのままほうっておくと「ゲットー化」していって、欧米で今起きているようなもっと強烈な排外主義運動に進展していくのはほぼ確実だからです。

今の時点で明確な方針を決めてちゃんと対処していかないと大問題になることは目に見えている。

だからここに必要なのは「受けて立つリベラル」なんですよ。

SNSでは「ガイジンどもは叩き出せ!」とか「ガイジンを見たら即職務質問しろ」みたいなレベルの取り締まり強化を求める声も沢山ありますが、21世紀の先進国でそんなことできるわけないですよね。

その「リベラルとして守るべき線」を引きつつこの問題に対処していく事が必要になる。

この問題に対する警戒感を持つ市民の気持ちを「レイシストめ!」と否定してかっこつけるのではなくて、

・その「市民の警戒感」を受け止めたうえで ・「リベラルとしてOKなやり方で」その問題に取り組む

…そういう「受けて立つリベラル」が今必要とされているわけです。

たとえば埼玉県警はトルコ語がわかる警察官を雇う事にしているらしいですが、普通の日本人の場合、警官との間には「交番フィロソフィー」的な日常的な本能レベルの牽制関係というか「お互いさま」関係を持てているわけですよね。

だから米国みたいにもう普段の「警察との信頼関係」が雲散霧消してしまっていて、何かあったらもう銃撃戦に突然なっちゃうような形にならずに済んでいる。

一方で、クルド人社会の中だけで育ってしまったクルド人にはそういう「阿吽の呼吸」はわからないわけですから、ある程度タッチポイントを意図的に作って、一緒に日本社会が持つ秩序感の形成への参加を求めていく必要がある。

それを「どう考えても差別」っていう形にならずにやるには、排外主義者にまかせてたらダメなわけで、リベラルが率先してこの問題に主体的に取り組んで、ちゃんとマンパワーをかけて対処していかないといけないわけですね。

アベマプライムのYouTube版ではカットされていたんですが、公式サイトのフルバージョンでは、最後の最後でEXIT兼近さんが凄い良いことを言ってたんですよね。(31分〜以後)

ざっくり意訳すると以下のようなことです。

兼近さんは自分が結構「悪い」育ちをしてるから、何が良いことで何が悪いことなのか、ちゃんと教育されずに成長して、その後有名になってからそのギャップに苦しんだ。でもその後色んな人に「そういうことはしちゃダメなんだよ」と教えてもらって、だんだん世の中のルールが理解できてきた。外国人の人も同じだと思うし、でもそれを「ちゃんと教えてくれる人」がいないと、何もわからないままルールを破ってしまって、それでそういう人がほんの一部だとしても、クルド人全体の悪印象になってしまう。そういうような連鎖が起きていったら絶対ダメだから、なにかちゃんと「教えてあげる」コミュニケーションを取れる仕組みを作ることが、受け入れるには必須だと思う。

めっちゃ意訳してるんで、ぜひフル動画を見てくれたらと思います。

これ、前に僕自身がアベマプライムに出た時にも思ったんですが、兼近さんってめっちゃ「聞き上手感」のある人で、兼近さんがいることで僕も番組中に凄い話しやすい気持ちになった印象があるんですよね。

理屈に頼らない自分の実感ベースで、他人の意見を偏見なく受取り、また偏見なく自分の意見を言語化できる人だと思います。

その後川口市議の荻野さんが川口市の小中学校の取り組みを話しているときも、兼近さんは「それを子供だけでなく親の方までリーチしないといけないのでは?制度が周知されきってない部分が問題なのでは?」みたいなめっちゃ的を得た意見を言ってて凄い良かったです。

ただその後は、実際にそういう取り組みが川口市で行われている話には行かず、クルド人のマヒルジャンさんと荻野市議との噛み合わないぶつかりあいみたいになって終わってしまって残念でしたね。(しかもアベマがYouTube版を編集するときにそのしょうもない言い争いの部分を残して兼近さんの発言をカットしてるのは最悪だったと思います。一番”険悪そうに見える”部分だけを残して火に油を注ごうとした意図があったと言われても仕方がない)

要するに、「警察力の行使」に対して過剰に反対するリベラル的心情もある種の「現実レベルの無責任さ」を持っている問題があって、そりゃ「中東系の顔つきを見たら即職務質問しろ」みたいなのは明らかにNGですが、少なくとも「血気盛んな」クルド人の若者からすれば、遠巻きに放置されてるより始終巡回しているちょっとしたトルコ語も話せる警官と「なんとなくお互い顔は知ってる」ぐらいの状況に持ち込んでいくことはある意味で「差別をしない」ために大事な発想であるはずだということです。

また、日本語教育にちゃんと予算をつける流れも起きていて、まだまだ不足はあるでしょうがなんとか公立小中学校が外国人子弟を包摂できるように努力している流れはある。

特に、日本人でも「個人主義者寄り」の人の中には大嫌いな人もいる(笑)、「生徒全員で掃除をするような」日本の義務教育文化が持ってる「おせっかい力」ってなかなか世界的にも凄いらしくて、過去10年〜20年の間在日外国人が増えたのに日本政府がちゃんとその対策を公式にはしてこなかった中、当面はその物凄い「おせっかい力」だけでなんとかギリギリ包摂してきた側面があるそうです。

その「草の根のおせっかい力」にちゃんと公式の政策的なサポートもしたうえで、キチンと『現実への責任感を持ったリベラル』的良心を持って活かしていけば、欧米版とは明らかに違う「文化統合策」が可能になるように私は感じています。

日本における移民問題は、そういう「おせっかいの輪」みたいな日本人なら普通にその中に取り込まれているようなモノにも、ちゃんと参加してもらえるように意識的にタッチポイントを作っていく事が、むしろ「差別しない」ために大事なことであるでしょう。

子どもたち相手だけでなく、「親」世代にもちゃんと日本語教育をして、日本語を学んでもらい、日本の風習にも慣れてもらう取り組みも行われているというのは、NHKの番組でも紹介されていた通りですね。

まだまだ全然足りないとは思いますが、「日本は日本人のための国です!神国日本を踏み荒らすガイジンどもを叩き出せ!」でもなく、「移民層にちょっとでも文化的統合を求めるのは帝国主義的国家の横暴である!粉砕せよ!」でもない形で、本当の「現実に対する責任」を持って川口市の担当者や埼玉県警は動こうとしているのが伝わってくるかと思います。

ぶっちゃけそういう「心理的な信頼関係」がコミュニティに形成されれば、時々学校行ってない子がいても「そういうこともあるよねえ」ってなるし、コンビニ前に若者が集ってても「おうおうやっとるな〜」ぐらいの感じになるはずです。

目指すのはそういう「包摂」で、それは「踏み込んで受けて立つリベラル」の一貫した強い意志を持った施策が必要になるでしょう。

SNSの「紋切り型の罵りあい」から離れて、そういう「人道的でありつつ厳格な」舵取りを徹底的に後押していくことが大事ですね。

4. 橋本先生的な「受けて立つリベラル」が求められている

NHKの番組が終わったあとのSNSの右翼さんの騒動の中では、橋本先生は「敵!」みたいな扱いになっていたんですが(笑)、でも橋本先生ほど実態に即してなんとか解決を導こうとしてる人はいないぐらいの感じなんですよ。

むしろ本質的には右翼さんの最大の味方といっていいぐらいだと思います。

番組内での橋本先生の発言をメモっておいたんですが、

そもそも出入国管理というのは、国が持つ当然の権利であり、また義務でもあるわけで、「どこかで」線を引かなくてはならないわけですね。

非正規滞在問題が話題となるたびに、一方で全員追い出せと、他方で全員在特(在留特別許可)にせよと、両極端な意見が出るんですが、私はどちらも非現実的な意見であって、長期的には日本のためにはならないと思っています。

ですから日本が人道的な法治国家として、どう公正で人道的で、かつ「厳格な」移民政策を行っていくのか、今後もギリギリの落とし所を探っていくような作業となると思います。

さらに国としても日本語教育制度をもっと充実させて、しっかりと日本のルールや文化を習得して頂けるよう『共生政策・社会統合政策』を十分な予算をつけて徹底する必要があると思います」

SNSの右翼の皆さん(の中でも一部のヤバい人ですが)は、この発言↑が、

「お花畑の多文化共生だ!こいつは日本をぶっ壊すスパイだな!実は中国人に違いない!」

…とか大騒ぎしてましたが(なぜ中国人って話になるんだw)、でも「伝統的なリベラルのありかた」から言えば、この橋本先生の発言は「物凄く踏み込んだ」ことを言ってるんですよ。

特に太字にした部分が大事で、

・「出入国管理を行うことは主権国家の”当然の権利”である」 ・公正で人道的でありつつ、しかし”厳格な”線引きを行っていく必要がある ・「日本語や日本のルール・文化を学んでもらう」という社会統合策をちゃんとやるべき

こういう「現実路線の舵取り」↑ごと原理主義的に否定しようとする「左翼的心情の絶対化」というのが日本のメディアでは支配的な中で、移民・難民問題の専門家としてキチンと「線引き」をしていく方向性を出そうとしている。

たぶん、一年前とかだったら、「心情的左翼主義の絶対化」で、↑「こういう現実主義的な線引き」すら徹底的に拒否して「クルド人の人たち可哀想!レイシストどもの支配する日本ってホント地獄だわ〜私は恥ずかしいです!」みたいな話で埋め尽くされる流れが日本では一般的だったんじゃないかと思います。

でも、徐々に「こういうのが大事だよね」という流れは共有できるようになっていると思いますし、番組で取り上げられていた川口市の取り組みは、右にも左にもよらずに必要なことをちゃんと一個ずつ打ち手を積んでる感じが凄い好感できました。

橋本先生に番組が終わってから個人的にお話を伺った時にも、

「ああいう発言をすればリベラルから袋叩きにされるかと思っていたが、案外クルド人の人たち御本人や、リベラル層からは好評価が多くて意外だった。おそらく、欧州の極右政権が問題になったり、米国のバイデン政権ですら何らか国境線をフルオープンにはできない事情が明らかになってくる中で、現実的な対処をすること自体を否定していてはいけないのだ、という風潮がリベラル側にも出てきているのだと思う」

…というような話をされていました。

SNSの右翼さんに言いたいのは、「日本は日本人のための国です!出てってください!」みたいな、アメリカ的文脈に直接翻訳したらガチ問題視されるような発言をそのまま主張しまくったって先進国日本で実現するわけないってことです。

一方で、橋本先生の発言はリベラル側から見ると「物凄く踏み込んだ」文言が含まれていて、これは橋本先生が、過去に北部スリランカのガチ紛争地での児童兵の開放支援のしごとみたいなのをしてきたリアリティから来る、「理想を一歩でも実現に近づける」責任感のある発言なんですよ。

ぜひ読んで欲しい橋本先生との対談記事から引用すると、

人道支援活動に携わる人間は「全員を救うのは不可能なことが多々ある」という辛い事実に直面させられるトレーニングを積む必要があるんです。たとえ1人でも多くの命を救うには何をすれば良いのかという知恵を絞らなくてはいけません。(中略) そういう体験をすれば、「逆側の立場の人」にも彼らなりの正義や譲れない思いがあるのだ、ということを前提にして、どうやって一歩ずつ歩み寄っていけるのかを、自然に考えるようになっていきます。

「”敵を論破してみせる”をやってお仲間だけでワチャワチャ馴れ合っている」ような世界ではなくて、「実際に存在する逆側の立場の人」とコミュニケーションを取って「一人でも多くの人を実際に救う」ことが重要なのだ、という強い意志がないと、リベラル的精神を持ちながら「あの位置」に旗を立てに行くことはできないんですね。

「レイシストどもって嫌ですよねえ、オホホホ」「信じられない下賤なヤカラどもですわよねえ、オホホホ」ってSNSで言い合ってる方が絶対にラクだからです。

でもそういう「踏み込むリベラル」こそが今必要とされているし、右翼さん(の中でもある程度こういう文脈が理解できる人)からしても、橋本先生の立場とは積極的に協力していく姿勢があったほうがその望みは叶いやすくなるでしょう。

あとはこの「排外主義を受けて立つリベラル」の路線をいかに育てて肉付けしていけるかが大事だと思います。

X(Twitter)で、「レイシズムを許さない!!」みたいなハッシュタグキャンペーンをやって「いや〜ボクは善人だなあ」と自己満足するようなリベラルでなく、馴染めなくて平日に公園でタムロするクルド人子弟に日本語を学んでもらうための仕組みを考え、違法行為を行うクルド人にはちゃんと警察力が及ぶような算段を具体的に考え、長年手弁当で日本語を教えて来たプロの日本語教員たちにまっとうな給与を支払う資金を手当していくように、警察や法律家や地方自治体や国に具体的な制度改革を交渉していくようなリベラルが今必要なのだってことですね。

5. 現実的な落とし所はどのあたりか?

で、ここからは個人的な「落とし所」の提案なんですが、

・まず「際限なく呼び寄せる」のはやめてくれ・・・という一線を明確に引く ・一方で入管法以外の違法行為はしていなくて、もう十年とか暮らしていて日本で働いているような人とか、日本で生まれ育った子どもたちは、実態を尊重して公的な在留資格を与えるべき ・仮にいわゆる「凶悪犯罪」を実際に犯した外国人がいたら、必ず日本からは出ていっていただく

…というあたりが、橋本先生のいう

公正で人道的で、かつ「厳格な」移民政策

…という事になるんじゃないかと思います。