一方、台湾の前総統である馬英九氏が中国を訪れました。ニュース画面からは中国は歓迎ムードであります。来年1月が台湾の総統選ですのでそろそろ激しい与野党間のかけひきが始まるのでしょう。そういう意味で台湾側の動き、中国の動き、台湾を取り巻く国の動きが着目されます。日本は距離を置き続けるスタンスになるとみています。バランス外交という名の主体性に欠くポジションは昔から変わっていません。特に林外相が秦剛外相と中国で数日中に会談することで調整が進みます。実現すれば3年3ケ月ぶりというのですからコロナだったとはいえ、日本は韓国を含む隣国のお付き合いが本当に希薄だったと言わざるを得ないのでしょう。

では中国が台湾を平和裏に取り込むことができるかですが、やる方法はあるのでしょう。それは中国が台湾に対して思いっきり各方面の優遇措置を出せばよいのです。そうすれば総統選で国民党の勝利に導くことは可能でしょう。その後に親中派の政権を抱き込むことで達成する方法があり、不可能ではないとみています。

ただ、私が見ているのは中国指導部にとって仮に台湾を取り込んだとしてもそこで当面の目標を失う点です。中国は世界での覇権を目指し、一帯一路、アフリカや東南アジア諸国への支援という名の影響力拡大、ロシアとの連携、更にはサウジとイランの外交正常化への仲介など確かに上手にやってきたと思います。ですが、それらが中国にどれだけの成果をもたらしたか、と言えばかなり疑問符がつくのです。確かに中国の存在感はアピールできたし、大国意識も芽生えたでしょう。ですが、それらの国々が中国をどれだけ敬っているか、と言いわれれば別の問題です。

覇権と言うのは何のためにやるのでしょうか?現代社会においては特に「切った、貼った」の話ではないのです。覇権という言葉には常に上下関係が付きまといます。そして中国の中華思想は権力構造そのものであり、中央こそ全てであるという発想なのです。

日本はなぜアメリカを大事にするのでしょうか?個人的にはGHQに占領されていた時のアメリカの日本への姿勢、そして沖縄を返還するなどパートナーとしての認識があったからではないでしょうか?いつでも本音で話ができる親友です。そこには双方の立場を尊重するという一定の敬意が存在します。中国にはそれが出来ない、それが彼らの最大の関門なのです。