曲の歌詞がアフリカを不当に暗く捉え、何も育たない恐怖と不安の世界を描いていると批判する声もある。
ゲルドフは集まった資金で「何十万人もの人々が生きている」とし、飢餓や水不足は現実の問題で植民地的な表現ではないと反論している。 (中 略) フューズODGは「表向きは危機を救うための募金に見えるが、長期的に見れば、アフリカ人としての集団的アイデンティティーを破壊しているだけで、これを変える必要がある」と述べた。
ロイター(2024.11.20) 強調は引用者
フューズODGとは、ガーナ系英国人の現役の歌手さんらしい。それで、ぼくはこの人の主張には今回、けっこう理があると思っている。
クリスマスを機に(原初的なキリスト教徒も暮らしている)アフリカに思いを致すのはいいんだけど、やっぱり歌詞のうちこうした部分のトーンは、いま振り返っても問題はあるよねぇ。
Where nothing ever grows, no rain or rivers flow, Do they know it’s Christmas time at all ?
(なにも育たず、雨も河も湧かない土地で、 彼らはクリスマスが来たと知っているだろうか?)
この曲は従来も、歌い手を「いまのスター」に差し替えてカバーされて来た過去がある。だったらリミックスじゃなくて、そうした箇所は新しく作詞して歌い直してもよかったんじゃないのかな。オリジナルも併録の上で、経緯についてジャケットに記載したりしておけば、色んな人が問題を考える契機になったと思う。
そう。この「考える」ということが、大切だ。
今回、批判があったにもかかわらず、40周年のリミックスCDがキャンセルされなかったのは、「次善の策」としては100%正しい。問題がある昔の歌詞のままの、歌が出る。一方で、問題だよ、と指摘する意見も報じられる。
複数の声が併存した状態をキープするかぎりで、ぼくたちは「これはどうなんだ? なにが正しいのか?」と考えることができる。片方だけを大音量にして、もう片方を世の中から消してしまったら、ぼくたちは考えられない。