経営努力の結果として利益の増大を実現
そんな高い利益水準を維持しているなかでの、たび重なる値上げについて、前述のとおり「家計が苦しい消費者に重い負担を強いて利益を高めている」といった批判的な声も出ているわけだが、経営コンサルタントで未来調達研究所取締役の坂口孝則氏はいう。
「直近四半期である24年12月期第3四半期と前年同期を比較してみると、売上原価率は横ばいとなっており、値上げによって、より大きな利益を確保しているとはいえません。また、販管費比率はやや下がっていることから、さまざまな面で経費を抑制する経営努力の結果として利益の増大を実現していると考えられます。
また、総務省の消費者物価指数によれば、パンの市場価格は2020年から24年までの間に約2割上昇しており、山崎製パンの値上げ幅を見る限りは、市場平均価格の推移に準じているといえます。主要原材料の小麦粉の価格は高止まりしており、物流費・人件費の上昇や人手不足が続いていることを踏まえれば、妥当な値上げといえます。大手電力会社やインフラ会社と異なり、パンを扱う事業者は食品メーカーに加えてスーパーやコンビニエンスストアなどの小売企業、パン専門店など無数にあり、山崎製パンの競合相手はものすごい数に上り、激しい競争を強いられているので、自社だけが利益確保のために大きく値上げするということは困難です。そうしたなかで、広い範囲の所得層をカバーするために低価格帯から中価格帯まで商品ラインナップを揃え、きちんと利益を出しているのですから、非常に頑張っていると評価してよいのではないでしょうか」
同社の売上高の規模を考えると、利益水準は決して高くはないという。
「売上高営業利益率をみると、わずか4%程度であり、他業種も含めた一般的な企業の数値と比較しても、どうみても暴利をむさぼっているとはいえません。むしろ、もっと利益を上げてもよいのではないかとすら感じます。これも、利幅が低い低価格商品を数多く扱っていることが要因だと考えられます」(坂口氏)