「ブルルンブンブン➔ブルルブルル➔ブルブル➔ブルル➔ブル」
となるはずです。
しかし研究者たちが分析を行ったところ、加熱するときと冷却するときでは、観察される粒子の運動状態のパターンが異なっており、加熱プロセスのほうが通過する振動パターンのバリエーションが少ないことが明らかになりました。
再び擬音を使って比較すれば実際の観測データは
加熱では「ブル➔ブルブル➔ブルルンブンブン」と短いのに
冷却では「ブルルンブンブン➔ブルルブルル➔ブルブル➔ブルル➔ブル」と長くなっていたわけです。
通過する必要がある振動パターンが少ないということは、加熱が冷却よりも早く進む理由になり得ます。
(※より正確には、加熱のときは「自由膨張」に近い挙動が見られ、粒子のエネルギー分布や位置分布が、ある種“開放的”に広がっていく一方で、冷却のときはエネルギーを放出する必要があり、粒子はより多くの中間状態(確率分布)をへながらゆっくりと落ち着いていくことが観察されました。擬音や矢印は状態のバリエーションを示す便宜上の表現となっています)
またこの違いは加熱と冷却の間では「確率分布が進む道のり」そのものも違っており、まるで別の物理現象だといってもいいほど非対称的なふるまいを示すことを示しています。
専門家の1人はこの結果について「今回の研究が発見したものはこれは熱力学の第二法則を発展させたもので、熱力学の追加法則と言えるかもしれない」と述べています。
熱力学の第2法則は、「高温の物体は自然に冷却される」という方向性(不可逆性)を示します。
しかし、この研究では、加熱と冷却の速度が異なることを明らかにし、第2法則の範囲を速度にまで拡張する可能性を示唆しています。
より簡単に言えば、これまでの法則は「高温のものが冷めるのは当たり前」という話だけが強調されがちでしたが、今回の研究によって「冷めるのは当たり前でも、速さは加熱ほどスムーズじゃない」という新しい追加法則がうみだされたとも言えるでしょう。