そして最後に観測を行い「奇妙な負の温度状態」にある「量子状態のごった煮」がどんな性質をしているかを調べました。

すると、高エネルギー状態の粒子が詰まっている状態にありながら、幾何学的フラストレーションのせいで、どこにも落ち着けない状態になっていることが明らかになり、粒子はこれまでにない不思議な秩序や新しい相転移を見せていることが判明しました。

さらに運動エネルギーがゼロであるのにも関わらず、内部で超流動が生まれている可能性が示唆されました。

これはある意味で走るための体力が全く無いのに、滑らかに動けてしまうという奇妙な状況です。

実験ではその様子を観察することで、これまで理論的には予想されつつも観察されたことのない奇妙な量子現象の手掛かりを得ることができました。

中学の理科の実験で、最後余った試薬をビーカーに投げ込んでごった煮を作ったり、さらにそれを加熱したりして、煙や泡が出たり発熱する様子を楽しんだ人もいるでしょう。

それらのごった煮の現象は中学で習うどの化学式よりも、高度で複雑な反応によるものです。

今回の研究では、研究者自身も良く解っていない幾何学的フラストレーションと負の温度を掛け合わせ、何が起こるかを調べた、最先端の遊びとも言えるものです。

もしこの状態を説明し制御する方法を見つけられれば、人類の量子技術はより高度なものへと飛躍できるでしょう。

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元論文

Quantum simulation with ultracold bosons in frustrated optical lattices
https://meetings.aps.org/Meeting/DAMOP24/Session/S00.98

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。