「奇妙」×「奇妙」を試すことにより、信じられないほど奇妙な何かが出現するかを試したのです。

「奇妙な量子状態」×「奇妙な温度状態」で何が起こるか?

奇妙×奇妙で何が起こるか?

答えを得るために研究者たちはまず、奇妙な量子状態として幾何学的フラストレーションを用意しました。

量子の世界でも、正の温度の世界では、最もエネルギー状態の低い粒子が多数派を占めるのは同じです。

しかし幾何学的フラストレーションを用いて形成される量子状態では、最もエネルギーが低い状態が複数出現してしまい、異なる状態にありながらもどれも最低エネルギー状態という奇妙な状況が出現します。

(※通常の正の温度の世界では、最低エネルギー状態は1種類です)

結果として、どの状態が優勢になるかは非常にあいまいで、系が1つの状態に収束できない混沌とした状況が発生します。

すると量子力学的なトンネル効果や干渉が非常に起きやすいようになり、普通の状態では見られない多種多様な繊細な量子的重ね合わせや干渉が発生します。

つまり幾何学的フラストレーションを使うと量子現象が多発する「量子状態のごった煮」を出現させることが可能になるのです。

このような「量子状態のごった煮」にあるものを、異常な負の温度の世界に案内したらどうなるのか?

研究者たちはさっそく実験を開始しました。

奇妙に奇妙をかけあわせたらもっと奇妙になりました
奇妙に奇妙をかけあわせたらもっと奇妙になりました / Credit:clip studio . 川勝康弘

調査にあたってはまず、カリウム39原子を真空チャンバーに閉じ込め、レーザーや磁場を使って絶対零度近くまで冷やします。

次に外部磁場や光格子の深さなどを一気に変化させ、もともと低エネルギー側にいた原子たちを高エネルギー側に移動させ、負の温度の状態を作り出します。

今回の研究ではこの光格子が特殊であり、幾何学的フラストレーション構造をしているため「量子状態のごった煮」を形成させることができました。