■前任者が明かした事実
同じく外交官で、かつてミャンマーに赴任していた前任者Bから電話がかかってきたのは、その数日後だったという。部屋を引き継いだ関係上、少しは責任を感じて後任の様子を確かめようとしたらしい。
B「どうだい、住みごごちは。何か支障はないかい」
前任者から聞かれた外交官は、ついこう口走ってしまった。
A「特に支障ありませんよ。一つのことを除けば」
すると、電話口の前任者の口調が変わった。
B「一つのこと? なんだいそれは」
行きがかり上、外交官は夜寝付けないこと、そして2回にわたり奇妙な音を聞いたことなどを告げた。すると驚いたことに、前任者はこう返したという。
B「心配いらないよ。そいつは悪い奴じゃない」
これには外交官も面食らったようだ。
A「どうして悪い奴じゃないとわかるんですか」
B「ああ、以前専門の人間に見てもらったことがあるんだ」
電話の内容について外交官Aは、次のように振り返る。
「どうやら前任者もなんらかの怪現象に見舞われ、精霊と交信できるという人物に調査を頼んだことがあるらしかったのです。ただそんなことを言われた後も、他に適当な住居もなかったので、結局不眠を我慢して、離任までこの建物に住み続けましたよ」