第4回交渉で特筆される最後の点は、議題の中に「非ナチ化」(プーチンが2月24日のビデオ演説で述べたもの)が含まれなかったことである。これもまた、ロシアがゼレンシキー政権の退陣とそれに続く傀儡政権の樹立という目標を後退させたことを示すように見えた。

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後に報じられたところでは、実際の和平案はウクライナにとって、さらに有利なものだった可能性があります。対談でも言及する、本年1月5日の共同通信の報道にはこうあります。

米国家安全保障会議(NSC)の欧州ロシア担当上級部長を務めたフィオナ・ヒル氏らは米外交専門誌フォーリン・アフェアーズで、ロシア、ウクライナ両国は(1)ロシア軍が侵攻前の地点まで撤兵(2)ウクライナはNATO加盟放棄を約束(3)NATO加盟の代わりとして、関係国により今後の安全を保障される―ことを柱とした和平合意で暫定合意していたことを明らかにした。先のウクライナ提案を基にした合意とみられる。

そうだったの? 侵攻以前の国境線まで回復できるなら(ただし、2014年に併合されたクリミアは別扱い)、これ以上の和平条件はないのでは。

なぜそれが流れたのか。イスタンブルでの和平案は有力な諸外国がウクライナの安全を保障し、もしロシアが再侵攻するなら「今度こそ」本気で防衛するという内容のため、ウクライナ単独では調印しても意味がありません。

ウクライナ側の交渉団を率いたアラハミヤが、後に証言したところでは――

同氏はさらに「ロシアが合意を100パーセント守るとの確信がなかった」とした後、直後にジョンソン英首相(当時)がキーウを訪問し「英国はロシアとどんな合意も調印する気はない。共にロシアと戦おう」と主張したことが交渉崩壊の一因だったことを明らかにした。さらに「複数の西側同盟国が(NATO加盟とは異なる)一時的な安全保障に合意しないよう」ウクライナに助言したとも語った。 (中 略) ウクライナ紙「ウクラインスカ・プラウダ」は2022年5月5日、ジョンソン氏がゼレンスキー大統領に「プーチン大統領は戦争犯罪者であり、交渉相手ではない」「もしウクライナがプーチン氏と安全保障文書で署名するつもりでも、西側はしない」とのメッセージを伝えたと報じていたが、今回のアラハミア氏の発言はこうした報道を裏付けるものとして注目された。