ウクライナ戦争支援
これに対し、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の必死の要請を受け、バイデン政権は懸命に支援の継続を訴え、議会工作を行っています。
その結果、下院は4月20日、ウクライナへの追加の軍事支援のための緊急予算案を超党派の賛成多数で可決しました(賛成311票、反対112票)。予算案は、総額およそ608億ドル、日本円にしておよそ9兆4000億円となっていて、支援の一部は返済義務がある借款の形をとることになっています。
この予算案はその後、4月23日、民主党が過半数を占める上院でも超党派の多数で可決され、直ちにバイデン大統領の署名によって成立しました。ゼレンスキー大統領は「ありがとう、アメリカ!」というメッセージを発表して謝意を表明しました。
これでウクライナの継戦能力は確保されましたが、逆に言えば、それだけ戦争が長引くことになり、ウクライナ市民の苦難と犠牲は増え続けることが懸念されます。
中東紛争の拡大の惧れ他方、パレスチナ(ガザ)紛争については、イスラエル軍の「過剰反撃」に国際的な批判が高まっていますが、米国はイスラエルに自重自制を求めつつも、基本的にはイスラエル支援の立場を堅持しており、状況は極めて微妙になっています。とくにトランプ氏は、以前からイスラエル贔屓で知られるので、大統領に復帰したらどう対応するか、状況がどう変わるか、大いに注目されます。
さらに気になるのは、今まで不倶戴天の敵同士として激しく対立しながらも直接対決は避けていたイランとイスラエルの間でも、この数日来、ミサイルやドローンによる攻撃が繰り返されていることです。ただ今(4月23日)現在、攻撃の応酬は一定のレベルに抑えられているように見えますが、双方が核兵器(またはその能力)を持っているだけに、今後の成り行きによっては、大変な事態になる惧れがあります。
さらに、この機に乗じてロシア、中国、北朝鮮などが何らかの形でイラン支援を加速すると、紛争は中東地域に留まらず、一気にグローバルな紛争にエスカレートする危険性もあります。
日本はどう対応するかこうした最悪の展開の可能性も排除されない複雑微妙な国際情勢の中で、もしトランプ政権の再登場となったら、どうなるか。現時点ではあまり先走った議論は避けるべきですが、米国と同盟関係にある日本としては、対岸の火事では済まなくなるので、今のうちから日本外交の進むべき道について、しっかりした検討を進めておく必要があります。
それに関連した1つの重要な課題として、日本の防衛費増加(対GDP比2%)の問題があります。周知のようにトランプ氏はかねてからNATO諸国や日本、韓国などの同盟国に対して防衛負担コストの拡大を求めており、それに応じなければ、米国は防衛義務を果たすつもりはないと公言しています。
ちなみに、日本の防衛費は1976年の三木武夫内閣以来、おおむね1%以内を目安としてきましたが、この10年ほどで着実に増えており、23年度は過去最大の6兆8000億円余りとなりました(GDP比で1%超)。
今後政府は、新たな「防衛力整備計画」で23年度からの5年間に現在の1.6倍にあたる43兆円程度(GDPの約2%)に増額することにしています。さらに、様々な手段による「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の強化も行うことにしています。
国土を守る基本姿勢を明確にこれらは決して戦争を仕掛けるためではなく、あくまでも抑止力強化のためであり、また米国に言われてやるものではなく、日本の防衛のために自らの判断でやるものです。そして、そうした観点からみて最も重要なことは、日本の国土は日本人自身の手で守るのだという基本姿勢を憲法で明記することだと思うのですが、これについては、本欄ですでに何度か触れていますので、今回は省略します。
最後に一言付け加えれば、日本の安全保障の確保には防衛力強化などのハードウェア面だけでなく、外交や文化交流などあらゆる手段を総動員すべきであることは申すまでもありません。
(2024年4月29日付東愛知新聞 令和つれづれ草より転載)
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
【関連記事】
・「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
・大人の発達障害検査をしに行った時の話
・反原発国はオーストリアに続け?
・SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
・強迫的に縁起をかついではいませんか?