アメリカ人の本音を代弁

しかし、それだけではなく、番狂わせの最大の原因は、「隠れトランプ支持者」が非常に多かったということです。後で判ったことですが、知的にも経済的にもエリート層に属する人ほど、表向きは当然のように民主党のヒラリー支持だと答えますが、内心ではトランプに共感していたようです。

トランプ元大統領公式サイトより

例えば、移民問題については、トランプのようにメキシコ国境に万里の長城のよう壁を築くのはやり過ぎだと言いながら、腹の中では、不法移民が大量に入って来ると治安が悪くなるし、保護するためには莫大なコストがかかる、だから壁は必要だ。

また、社会保障制度については、不法移民や貧乏人たちまでカバーするとなると我々の経済的負担が増えるからオバマ・ケア(国民皆保険制度)には反対だ。しかし、そんなことは言いたくても公には言いにくいが、トランプはずばり代弁してくれている。だから彼の「米国ファースト」には大賛成だーーというのが本音なのではないかと思います。

「アメリカ第一主義」

今振り返ってみると、確かに、民主党のオバマ政権時代の政策(「核なき世界」、パリ協定、イラン核合意など)は国際的には大変好評でした。

チェコの首都プラハのフラチャニ広場で演説するオバマ大統領(当時)出典:Wikipedia

しかし、トランプ支持者たちに言わせれば、そういったオバマの国際的なパーフォーマンスは米国の利益にはなっていない。現在の米国にはかつてのように「世界の警察官」になる余裕はないのだから、もっと国内利益最優先の現実的な政策を打ち出すべきだということでしょう。

さらに言えば、ウクライナ戦争やパレスチナ(ガザ)紛争も、トランプ政権なら起らなかっただろうし、ロシア、中国、北朝鮮、イランなどが世界各地でのさばることもなかっただろう。もし大統領に再選されたら、これらの戦争や紛争はあっという間に解決するとトランプ自身が豪語しています。

「第2次トランプ政権」の政策

さて、半年後に迫った大統領選挙の結果について現時点で予測することは甚だ困難ですが、トランプ政権再登場の可能性がある以上、私たち日本人も今のうちからある程度心の準備をしておく必要があると思います。

もし第二次トランプ政権になったら、第一次政権の時より、もっと大胆かつストレートに“トランプ流”を打ち出すだろうと思われます。とくに外交政策は大きく変わる可能性が考えられます。差し当たり注目されるのは、ロシアによる侵攻が続くウクライナ戦争とパレスチナ(ガザ)紛争にどう対応するかです。

ウクライナ戦争については、戦争の長期化に伴い、ウクライナを支援する米欧諸国に「援助疲れ」が目立ってきています。最大の軍事支援国である米国では、野党・共和党が多数を占める議会下院で、これ以上のウクライナへの支援は継続すべきではないという意見が高まっています。そのため、与野党の対立から追加支援のための予算が承認されない状態が続いており、昨年末以来資金が枯渇して軍事支援が滞っています。