その結果はある意味で「月光の特性が白いフクロウを誕生させたと」言えるものでした。

げっ歯類の視覚は暗闇に対応しており、光に溶け込む白いフクロウを見つけるのは困難です
げっ歯類の視覚は暗闇に対応しており、光に溶け込む白いフクロウを見つけるのは困難です / Credit:Canva . 川勝康弘

従来の研究が暗闇や隠れる場所といった「遮蔽環境」の影響を強調してきたのに対し、本研究は、光が「背景との同化」を左右する能動的な要因であることを示しています。

例えば、月光の波長や強度がフクロウの羽毛の反射特性とどのように相互作用し、結果として捕食効率を最適化するのかという点は、動物と環境の関係性を進化生態学の新たな観点から捉え直す必要性を示しています。

またこの仕組みを理解することは、新しい芸術や舞台の視覚トリックの開発や、軍事分野での秘匿性の向上に役立つと期待されます。

(※人間にも光が「白い物体をぼやけさせる」という錯覚を引き起こすをことから、可能性は大いにあるります)

さらに、こうした環境光が選択圧として機能する場合、同様のメカニズムが他の動物にも普遍的に存在する可能性があります。

もしかしたら他にも白い体色を持つ夜行性動物や昼間の逆光条件で特定の波長に溶け込む体色を持つ動物にも同様の適応が見られるかもしれません。

この仮説を検証することで、光環境が動物の生態的特性に与える影響の普遍性を探ることができるでしょう。

もし今度ハリーポッターの映画を見ているときに、賢げな子供が白いフクロウをみて「白だと目立っちゃうんじゃない?」と尋ねたなら「闇ではなく光に溶け込む動物もいるんだよ」と教えてあげるといいかもしれません。

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元論文

Nocturnal camouflage through background matching against moonlight
https://doi.org/10.1073/pnas.2406808121

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。