それでは先ず、ニュートンが計算した数字「1260」はどのようにしてはじき出されたかだ。「1260」という数字は黙示文学では重要な意味を持つ象徴的な数字と考えられ、聖書の中では「預言的な期間」として登場する数値だ。

ダニエル書7章25節には「聖徒はひと時と、ふた時と、半時の間、彼の手にわたされる」と述べられている。ダニエル書12章7節にも出てくる。「ひと時」=1年、「ふた時」=2年、「半時」=0.5年とすれば、1+2+0.5=3.5年。一年を360日とすると、3.5×360=1260日となる、といった計算だ。ちなみに、預言における「1日」は実際の「1年」と解釈する「日年法」を採用している。

「ヨハネの黙示録」11章3節、12章6節では、「1260日」という具体的な数字が用いられている。例えば、12章6節では「女性が荒野に逃れた期間」を1260日としている。また、11章3節では「二人の証人」が預言をする期間として1260日が記されている。これらの箇所から、「1260」という数字は聖書の黙示文学において「象徴的な迫害や試練の期間」を表すものとして理解されてきた。

次に、ニュートンがいう「特定の歴史的出来事」だ。ニュートンは「神聖ローマ帝国の成立」(西暦800年)やローマ教皇の世俗的権力の台頭を、その起点と見なしている。もし西暦800年を起点とするならば、800+1260=2060年という数字が出てくる。先述したように、ニュートンは「2060年」を「世界の終末」ではなく、「新しい時代」が始まり、宗教的腐敗が終焉し、キリスト教が純粋な形に戻ると考えていた。

ちなみに、ニュートンの時代、多くの神学者や預言研究者は「1260年」という期間をローマ・カトリック教会や教皇制度の象徴と結び付けていた。この期間を「教会の堕落」または「異端的支配」の時代とみなし、その終焉を人類の宗教的刷新の時期と予測していた。ニュートンもこの考えに影響を受けつつ、独自の解釈を加えて2060年をはじき出したわけだ。