兵庫県職員公益通報制度では以下書かれています。

県又は公社等の事業又は職員等の行為について、法令違反や職務上の義務違反又はこれらに至るおそれがあるもの、上記に準ずるものとして、県政を推進するにあたり県民の信頼を損なうおそれがあるものについて通報できます。

公益通報者保護法の「通報対象事実」は各種の法令行為に限定されているので、県の制度では、法律よりも遥かに広い範囲の事実を対象にしているのが分かります。

これに対して、公益通報者保護法の観点から見ると、3月12日付文書の場合は、内部通報の事実は存在していませんでした(以下図を参照)。

他方で、4月4日のものは元県民局長が在職中に作成者を明かした上で県の窓口に提出されています。

ただし、文書の内容は曖昧過ぎて法2条の「通報」要件を満たしておらず、誹謗中傷に渡る記述もあることから「不正の目的でなく」要件も満たしていないので、そもそも公益通報に当たらないと言えます。

もっとも、受け取った組織の側が任意に公益通報として扱うことは妨げられません。

この場合において敢えて法律上の概念に相当するか否かの話をするならば、4月4日の文書はいわゆる「一号通報」となり1、「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合」に解雇無効や不利益取り扱い禁止の効力が法的効果として生じます。

つまり、仮に公益通報として扱ったとしても、『2号通報や3号通報で求められる「真実相当性」』の話は、不要になるわけです。「思料」すれば足りるのですから。これは刑事告発と同じ要件ですが、それでも具体的な記述が求められるのが常です。2

ただ、裁量権の濫用という一般原則を論じるならば、通報された事実関係の真実相当性が勘案されることになりますが、仮定の上であってもそんな検討をする場所があるとは思えません。

まとめ:告発文書の記載事実の認定とパワハラと評価できるかという話は別

告発文書の記載事実があるかどうかと、パワハラと認定できるかどうかは、次元が異なる話です。記載されている事実関係について、それに相当する具体的な一定の事実はあったが、それが記載事実から伺えるものでもない上に、斎藤氏の事柄であるという事実はついぞ認定されなかったということです。