フランシスコ教皇はバチカン内で保守派聖職者が如何に強いかを肌で感じてきたはずだ。聖職者の独身制の廃止、女性聖職者の任命をアピールしたとしても、最終的には元のドグマに戻る。そこで「病んでいる教会」(チェコの宗教哲学者トマーシュ・ハリク氏)を抜本的に改革するために改革派の枢機卿を一人でも多く任命する道を考えたのだろう。

フランシスコ教皇は次期教皇選出会を視野にいれ、2013年3月以来、これまで10回、枢機卿任命式を実施してきた。今月7日に新たに21人の枢機卿を任命したばかりだ。フランシスコ教皇選出の枢機卿数は132人で枢機卿内でも既に多数派だ。選出された枢機卿はフランシスコ教皇の改革路線を支持する聖職者、少なくとも改革派であることはいうまでもない。フランシスコ教皇が任命した132人の枢機卿のうち、99人が現在、80歳未満でありコンクラーベの投票権を持っている。だから、フランシスコ教皇が亡くなったとしても、教会刷新路線は継承されるというわけだ。どこかの国の議会での多数派工作のような面がある。

14億人余りの信者を有する世界最大のキリスト教会、ローマ・カトリック教会は12月現在、枢機卿は253人、コンクラーベへの参加有資格者は140人だ。ちなみに、2025年末までには14人の枢機卿が80歳を迎えて、投票権を失う。コンクラーベで枢機卿が教皇として選出されるには、全参加枢機卿の3分の2以上の支持が必要だ。このルールは、バチカン法令および教皇ヨハネ・パウロ2世の使徒憲章に基づいている。

参考までに、国別で枢機卿の数が最も多い国はバチカン教皇庁があるイタリアだ。昔は枢機卿はほとんどイタリア人が独占してきたが、米国のほか、欧州のカトリック教国のフランスやスペインからも多くの枢機卿が選ばれてきた。大陸別にみると、聖職者の未成年者への性的虐待事件が多発し、信者離れが進む欧州教会が依然、80歳未満の枢機卿の最大グループで52人、次いでアジア24人、アフリカ19人、北米と南米が共に17人だ。ここでも信者数が伸びているアジアやアフリカで枢機卿数が増えている。